▼メデイアの性格とニュース価値を象徴する話として、エルバ島に流されたナポレオンが、島を脱出してパリに戻るまでの新聞の見出しがある
▼「怪物、流刑地を脱出」に始まり「コルシカの狼、カンヌに上陸」「悪霊、ガップに出現」「食人鬼、グラッスヘ」。パリに近づくにつれ、呼称は「王位簒奪者」「悪辣(あくらつ)皇帝」「僭主」となり、「ナポレオン氏、明朝パリへ」に変わり「皇帝陛下、ご帰還。皇帝万歳」
▼似て非なる例えとして気象情報がある。南の海で台風が発生した時は小さい記事だが、その進行方向によってはどんどん大きくなり、伊勢湾台風級が日本を直撃になると一面トップで報じられる。進路が遠ざかるに従い小さくなっていく
▼外国で起きた事件事故などでは、日本人が巻き込まれたかどうかで、日本のメディアは極端に取材も報じ方も変わるということもよく指摘される
▼「ジャーナリスティック」と「センセーショナリズム」がしばしば混同して用いられるから、やむを得ない指摘ではあろう。県が公文書4冊を紛失したという記事が二段の小さな扱いになっていた。総務部が昨年末に文書点検をメールで全庁に依頼。結果を1月12日に公表したが、そのメールを見ていなかった部門の分が今回という。原因はいつもと同じ誤廃棄の可能性で、個人情報流出も確認されていない
▼今始まった新しいことではなし。関心を引く内容でもない。かつて議会からも苦言が相次ぎ、本紙も大きく報じたが「なーんだ、またですか」と小さくなっていくのはやむを得ない。