<みえの事件簿上・津市女児虐待死事件>問われる児相の対応 安否確認直接せず

【検証委の初会合で、事案の経緯を聞き取る委員ら=7月14日、津市桜橋3丁目の県津庁舎で】

津市で今年5月下旬、母親による女児虐待死という痛ましい事件が起きた。県警は6月29日、同市久居野村町の自宅で三女ほのかさん=当時(4つ)=に暴行を加え死亡させたとして、傷害致死の疑いで、母親の中林りゑ子容疑者(43)=傷害致死罪で起訴=を逮捕した。県児童相談所は1年以上前に女児への虐待を把握していながら、一時保護を見送り、女児が保育園への登園をやめて以降は1年近く安否を直接確認していなかった。県は事件を受け、対面による安否確認の徹底などの対応を取った。県が令和2年7月から児童虐待対応業務の効率化などを目的に運用する、AI(人工知能)を用いた評価システムの是非も含め、再発防止が強く求められている。

起訴状などによると、中林被告は5月21日ごろ、女児が上に立っている布団を引っ張り上げて転倒させ、女児は後頭部を床に打ち付けた。翌日にも背中を右手で殴り、女児は高さ約30センチの机から転落。26日に急性硬膜下血腫に伴う脳ヘルニアで死亡した。

事件では、児相の対応が問題視された。児相は令和元年6月に女児を一時保護。昨年2月には女児に虐待の疑いがあるとの通告が寄せられたが、女児が保育園に通園していることなどを理由に一時保護を見送った。

児相は保育園から近況を把握していたが、女児が昨年7月に登園しなくなって以降、女児の安否を直接確認していなかった。また、保育園関係者が今年1月に女児に面会したことを児相は把握しておらず、関係機関の連携不足も浮かび上がった。

AIを用いた県独自システムの評価結果も注目を浴びた。児相が虐待の通告を受けた昨年2月時点で、類似の事案で過去に一時保護をした割合は39%、半年以内に再び同様の被害を受ける再発率も13%と算出されていた。

県の担当者は「システムの評価はあくまで参考。この数字で一時保護を見送ったわけではない」と説明。令和元年の一時保護が評価には反映できていないなど、AIの有効活用には大きな課題が立ちはだかる。

県は再発防止策として、児童の安否確認時に対面での観察を徹底するよう指示。AI評価はあくまで参考であることを改めて確認した。8月には、児相職員など児童福祉に関わる職員を3人増やし、さらなる増員も検討している。

また、県は児相などによる当時の対応を検証するため、弁護士や児童精神科医ら5人で構成する検証委員会を設置。月1回以上のペースで議論を重ね、来年3月ごろをめどに再発防止に向けた提言をまとめる。

一方、再発防止を目指す中で11月、別の虐待事件が明るみに出た。小学生の息子(11)を鈴鹿市内の自宅に一人で置き去りにしたとして、保護責任者遺棄容疑で母親(38)が逮捕された(のちに起訴猶予処分)。児相は事件の約1カ月前に母親のネグレクト(育児放棄)を把握したが、男児に強く拒否され、一時保護をしていなかった。

県が検証委を設置した児童虐待死事案は平成24年に2件、同29年に1件発生。繰り返される虐待死を防ぐことができるのか。県の担当者は「検証結果を踏まえ、地道に対策を続けるしかない」と話す。