認知症スタッフが接客 伊勢で一日限定レストラン 三重

【客から注文を聞き生き生きと仕事をする認知症のスタッフ(中央)=伊勢市小木町のクロフネファームで】

【伊勢】「メイン料理を選んでください」「どうぞごゆっくり」―。認知症の人が注文を取ったり、料理を運んだりして接客する一日限りのレストランイベント「おたがいSUNSUN クリスマスランチ」が21日、三重県伊勢市小木町の飲食店「クロフネファーム」で開かれた。

市や市内6地区の地域包括支援センターが、認知症当事者の社会参加と、周囲の認知症への理解を深めることを目的に初めて企画。趣旨に賛同した同店の協力で、認知症の症状がある市内の70―80代の4人が、接客スタッフを務めた。

来店客は、事前に申し込みのあった約60人。エプロンを着け、赤いサンタの帽子をかぶった4人のスタッフは、支援センター職員らのサポートを受けながら各テーブルを回り、事前に用意したメモを見ながら「メイン料理は3つの中から選んでください」「お水はご自由にお取りください」などと案内。料理が出来上がると、慎重に一皿一皿丁寧にテーブルに運んだ。

多少の間違いがあっても、店内は終始和やかな雰囲気。客から「ありがとう」「がんばって」と声をかけられると笑顔で応えて会話し、疲れたら少し休憩。体力に合わせてそれぞれのペースで仕事をし、最後に報酬を受け取り働く喜びを体験した。

接客スタッフを務めた当事者の中馬千鶴さんは「仕事は楽しかった。みんなが喜んでくれて、笑顔がうれしかった。また働きたい」と笑顔をみせた。

同様の取り組みが他県で行われていることを知り、市中部地域包括支援センターが中心となってイベントを計画した。同センターの中山道代さんは「認知症の人にとって人と接すること、社会参加は大切なこと。周囲の理解が広がることで、誰もが住み慣れた町で安心して暮らせる共生社会への第一歩となれば」と話していた。