<1年を振り返って> 松阪市長選、兵庫の男性が突如立候補 現職「戸惑う」

【出陣式で気勢をあげる竹上氏=8月27日、松阪市田村町で】

8月27日告示の三重県の松阪市長選挙は、立候補の表明が現職の竹上真人氏(61)だけだったため無投票とみられていた。だが、市選挙管理委員会が告示3日前、兵庫県伊丹市の会社役員小西彦治氏(52)の立候補届出書が郵送されたと発表し、一転、選挙戦となった。小西氏は「松阪とゆかりは全くない」と語った。

公選法には地方議員に立候補する場合、その自治体に3カ月以上住んでいなければならない住所要件がある。一方、知事と市町村長は、広く人材を得る観点から住所要件を設けていない。国会議員は国民の代表なので住所要件はない。

しかし首長も国会議員もほとんど立候補する自治体に住んでいる。その自治体のことは住んでいなければ分からないという常識がある。

出陣式で竹上氏は「戸惑う。松阪市のことは松阪市に住むわれわれで決めていきましょうというのが地方自治。民主主義が挑戦されているように思う。住んでいるまちを自分たちでよくしていこう」と訴えた。

9月3日に投開票され、竹上氏が3万4184票で3選を果たし、小西氏は7121票だった。

当選証書を受け取った竹上氏は「誰と戦ったのか分からない選挙だった。信任投票に近い」と5倍近くの大差で圧勝した戦いを振り返った。「有権者にきちんと意思表示していただいた。終わってみると選挙ができて良かった」とも話した。

小西氏は兵庫県議を1期、伊丹市議を2期務め、今年4月の同県議選と同市議選に落選した。「地方議員を12年して議員の限界を感じ、首長選を考えていた。全国的に可能性がある場所で挑戦しようと7月末に出馬を決めた」と動機を説明した。

また「大きい都市では候補者が乱立して勝ちにくいので、政令指定都市と中核市を除き調査した」「無投票の可能性が高く、陣営が『ない』と思っているところに切り込む」「負けたら次の所にいく。1カ月に1回の早いペースで」と方針を示した。ただ、目標が当選なのか、無投票阻止なのか、どちらか分かりにくい。

落選した小西氏は予告通り、今度は10月1日投開票の岡山県総社市長選に立候補した。松阪市長選時と同じく告示直前に立候補を表明し、同じく惨敗した。

得票が有効投票の10分の1未満なら供託金の100万円が没収される。5選した現職の2万190票に対し、小西氏は2268票で辛うじて免れた。

竹上氏は「総社市長選に小西氏が出るという時、総社市長から電話がかかってきた。どういう人なんでしょう、と」と明かす。

電話では「総社市長も私とよく似た感覚だった。市長選は誰でも出れる。それは問題ない。しかし、かじ取り役としてある程度そのまちのことを把握して進めていかないと、スムーズに行政ができない」と話し合ったという。

小西氏はいくつか立候補し、再び県内に登場した。11月26日投開票のいなべ市長選告示日に突然立候補を明らかにし、6選した現職の日沖靖氏に5倍近くの票差をつけられ惨敗した。

松阪市長選時に小西氏は「旧態依然の選挙は変わってきている」と意気込んだ。しかし1年もたたず、惨敗を伴う突然立候補という小西氏の手法自体が旧態依然になってきたので、小西氏は変わらなければならない。