2023年11月7日(火)

▼岸田文雄首相の「聞く力」はさまざま論じられているが、これもその一つか。先の参院補選徳島・高知合区で、演説中に「増税メガネ」とやじった男性が会場から追い出された。首相の意向か、それとも、首相への忖度(そんたく)か

▼衆参補選の結果が首相の不人気を浮き彫りにしたことは多くが認める。政権浮揚策を急がねばならないが、首相は周辺に「国民は減税を求めている」と語っていたらしい。やじを的確に受け止めていたということか。期限付き所得税減税を与党幹部に指示し、国会では「経済、経済、経済」と連呼したが、3、5日の共同通信社全国電話世論調査では、内閣支持率は前月をさらに4・0ポイント下回って28・3%。平成21年の麻生政権末期以来の30%割れで、過去最低を更新した

▼国民の目に映る岸田首相の政治家像、人物像は一言で表せば「拍子抜け」ではないか。経済対策も防衛力強化も異次元の少子化対策もタマネギの皮をむいているかのように芯に行き当たらない。期待を大きく下回る実態があらわになってくる

▼「拍子抜け」は「期待外れ」と同義語で、次第にボディーブローのように効いてくる。マユに唾するようになるのは、減税対策もまたそうなのだろう

▼評価しない理由は「増税が予定」「経済対策より財政再建」「政権の人気取りだから」。足元を見られている。対して、減税分などの使途は「生活費や教育費など日々の支出」が66・5%。「娯楽や高級品購入」は4・6%。沸き立つ雰囲気とはほど遠い

▼前回調査で「所得税減税が必要」は6割超。支持率低下の意味は深刻だ。