県立大の新設以外の選択肢模索を 有識者会議、報告書案まとめる

【報告書の案をまとめた有識者会議の委員ら=津市栄町1丁目で】

三重県立大設置の是非を検討する有識者会議(田村秀議長、5人)は29日、報告書の案をまとめた。「県立大の新設以外の選択肢を模索した方が、若者の県内定着に資するのでは」と明記。近く県に提出する。

報告書の案は、学生1人の県内定着に必要な県の負担が最大で約7400万円に上るなどとした費用対効果の試算について「総じて高いとも言い難い。効果が不透明な新設は慎重に検討すべき」などとした。

「小規模な大学の新設なら一定の効果が見込める可能性がある」としつつ「魅力的でないと学生が選ばない」「あまりに特色ある大学だと卒業時は県外に出て行く」などと、新設に消極的な記述が目立った。

その上で、県内の高等教育機関による学科再編を支援する方が「学びの選択肢が広がり、県内に残る生徒が増える」と指摘。県内定着を促す手段として、奨学金の返還支援や県内就職の支援などを提案した。

県が15日の会合で示した県立大設置の新たな費用対効果は、従来の試算結果から大幅に悪化。卒業生の県内就職率を当初の想定から引き下げるなどしたためで、委員からは新設に消極的な声が相次いでいた。

県は報告書の案を10月10日に開く県議会の政策企画雇用経済観光常任委員会に報告した上で、県立大設置の是非について判断する方針。判断の時期は「できるだけ早くしたい」とし、具体的には定めていない。

県立大設置の議論をめぐっては、令和3年度に設けた有識者会議が「設置の必要性は一定ある」との報告書をまとめた。一方、県は「より詳細に検討する必要がある」とし、新たに有識者会議を設置していた。