特殊詐欺被害「極めて深刻」 三重県警、水際対策強化へ 県議会一般質問

【(右から)山崎博議員、長田隆尚議員、今井智広議員、稲森稔尚議員、芳野正英議員】

三重県議会9月定例月会議は26日、山崎博(自民党、2期、四日市市選出)、長田隆尚(草莽、5期、亀山市)、今井智広(公明党、5期、津市)、稲森稔尚(草の根運動いが、3期、伊賀市)、芳野正英(新政みえ、2期、四日市市)の5議員が一般質問した。県警は今年に入って認知した特殊詐欺の被害について、既に昨年一年間の件数や被害額を上回ったことを明らかにした。難波正樹本部長は被害状況を「極めて深刻」と強調し、金融機関やコンビニによる「水際対策」を強化する考えを示した。今井議員への答弁。

補助金の手続き煩雑

山崎 博議員(自民党)
エネルギー価格の高騰などによる影響を受けた事業者を対象にした補助金申請の手続きが煩雑だと指摘。県当局は緊急的に補助したコロナ禍とは異なり、経営革新に向けた意欲的な取り組みを支援する必要があると説明した。

【補助金】
山崎議員 県はエネルギー価格高騰などの影響を受けた事業者を対象とした生産性向上・業態転換支援補助金を設けたが、申請の条件や方法を読めば読むほど理解できない。申請までたどり着ける中小企業は何社あるというのか。

小見山雇用経済部長 これまで8回の募集をし、2191件に約32億円の交付を決めた。企業の挑戦を後押しする制度にする必要があり、商議所などを通じて寄り添って支援する。事業者や商工団体の声に耳を傾け、より良い制度となるよう取り組む。

【萬古焼】
山崎議員 四日市萬古焼の原料となるペタライトはリチウムイオン電池にも使われ、世界で需要が高まっている。県はペタライトに代わる原料として低熱膨張セラミックス「コーディエライト」などの研究を進めているが、支援の考えは。

小見山部長 県工業研究所は萬古焼に使うペタライトを半減できる試験用陶土を開発し、事業者が試作を進めている。早期の商品化に向けた技術確立や製品テストなどを支援する。ペタライトの代わりになる原料や新たな調達ルートの導入なども支援を検討する。

リニア開業へ決意は

長田 隆尚議員(草莽)
リニア中央新幹線の静岡工区が「いまだに着工できていない」とし、対応を尋ねた。一見知事は川勝平太静岡県知事を「リニア賛成の立場」と説明。早期開業に向けて「すりあわせが加速するよう見ていく」と述べた。

【リニア】
長田議員 5月のリニア中央新幹線建設促進期成同盟会には静岡県知事が初めて出席したが、いまだに静岡県内では着工できていない。この状況をどうするのか。期成同盟会の副会長を務める知事の早期全線開業に向けた決意は。

知事 静岡県知事は期成同盟会で「リニア賛成」とおっしゃった。人口減の局面で成長力を確保するにはリニアが必要。名古屋以東などの工事が遅れることは耐えられない。静岡県でもさまざまな議論が行われている。すりあわせが加速するよう見ていく。

【関西線】
長田議員 JR関西本線の利用促進に向けた取り組みで見えてきた課題は。関西本線の利用を促すため、ICカード乗車券を無料で配布して通勤で利用してもらう事業の応募が極めて少なかったと聞くが、その原因は。

清水地域連携・交通部長 鉄道はあって当たり前と考える住民もいることや、関西線で伊賀市や亀山市に行けることを知らない人もいることが分かった。応募が少なかったのは、募集や利用の期間が短かったことが原因。駅からの二次交通の確保も課題だと考える。

知事の発信少し弱い

今井 智広議員(公明党)
就任から2年がたった一見知事の姿勢について「県民と共にやっていく発信が少し弱い」と指摘。一見知事は「ご指摘の通り。県民と一緒に作っていくことを心がけたい」などと答弁した。

【姿勢】
今井議員 県民の声を聞く知事の姿勢は心強いが、県民と共にやっていくという発信が少し弱いと思う。知事は「これまで以上に実行や成果が求められる」と話しているが、より強く「県民と共に」を発信すべき。

知事 ご指摘の通り。就任からの2年間は行政の土台作りに努めてきた。これからは少し立ち止まることがあっても良いと思う。今まで以上に多くの声を聞く。子育てや環境、観光、農業など、多くの団体の皆で一緒に良い県を作るよう心がけたい。

【防犯力】
今井議員 今年は特殊詐欺の被害が非常に多い。県内では1―6月の被害が前年同期比で72件増、被害額も8390万円増となっている。最後のとりでが水際対策。銀行や郵便局、コンビニの協力が重要だが、阻止の現状は。

難波県警本部長 金融機関やコンビニなどには昨年中に156件で約1億2370万円、今年は8月末までに102件で約6150万円の被害を阻止してもらった。「声かけ支援シート」の活用を進めるなどし、引き続き被害の防止に協力してもらう。

国体は慎重な検討を

稲森 稔尚議員(草の根運動いが)
コロナ禍での県内開催を断念した国民体育大会(国体)について「早期開催は極めて慎重な検討が必要」と主張。一見知事は今後の国体について「簡素化の方向で動くと思う」との認識を示した。

【国体】
稲森議員 知事の考える新しい国体のあり方とは。準備に10年近い歳月が必要で百数10億円の財政負担がある「スポーツ界の大型公共事業」を、そのまま開催することは容認できない。早期開催は極めて慎重な検討が必要。

知事 一つの県だけで開催できないことも出てくると思う。時代に合ったあり方を模索する必要がある。大きな流れでは簡素化の方向で動くと思う。天皇杯や皇后杯を(開催県が)必ず取ることの疑問もある。県民一人一人の負担。県民の声を聞いて進めたい。

【配分率】
稲森議員 県は体育スポーツ振興基金に配分する法人県民超過課税の割合を国体の開催前に拡充した。知事には子どもの幸せを中心に置く県政を期待するが、基金への配分率を見直して子ども施策を拡充させるべき。

知事 法人県民税の超過課税分は子ども基金や環境保全基金にも充てている。いずれも重要。体育スポーツ振興基金への配分率を上げることに同意した方の意見を聞きながら対応する必要がある。タックスペイヤー(納税者)の声も聞きながら丁寧に進めたい。

国体早期開催考えは

芳野 正英議員(新政みえ)
県スポーツ協会が要望した国民体育大会(国体)の早期開催に向けた県の考えを尋ねた。一見知事は「関係者と開催の時期について調整していく」としつつ、開催時期のめどについては明言を避けた。

【国体】
芳野議員 県スポーツ協会は8月、国体の早期開催を求める要望書を県に提出し、知事は「そろそろ新しい決断の時期に差しかかっている」と答えた。県内開催は関係者や指導者にとっても大きなチャンス。開催時期は。

知事 さまざまな意見を聞きながら、関係者と県内開催の時期について調整していく。三重県だけが2巡目の国体を開催しなかったということになると、特にスポーツに携わる次の世代にとっては耐えられない。そうならないように取り組む。

【新生児】
芳野議員 新生児の疾患を早期に発見したり、発育の遅れを防いだりすることを目的とした検査「マススクリーニング」について、無料で検査を受けられる範囲を独自に拡大している県もある。県も拡大を検討すべき。

中村子ども・福祉部長 県では20の疾患を検査している。有料ではあるが、2月からは新たに4つの疾患について検査が受けられるようになった。他県の状況を踏まえ、どんな支援ができるかを検討したい。国に公費負担の対象拡大を働きかける。