県立大の「費用対効果は悪化」 三重県が新たな試算、有識者会議

【県立大の設置をめぐって議論する委員ら=津市栄町1丁目で】

三重県は15日、県立大設置の是非を検討する有識者会議(5人)の会合で、県立大設置の新たな費用対効果を示した。卒業生の県内就職率を当初の想定よりも引き下げるなどし、費用対効果は従来の試算結果から悪化。委員からは新設に消極的な声が相次いだ。

新たな試算結果は、学生の県内定着によって得られる経済波及効果が県立大の整備や運営にかかる経費の「最大1・589倍」にあたると算出。従来の試算結果で示した「最大3・131倍」を大幅に下回った。

このほか、学生1人を県内に定着させるために必要な県の負担は、約4300万円から約7400万円と試算した。約1500万円から6千万円の範囲だった従来の試算結果から大幅な負担増となった。

県は6月に開いた有識者会議の初会合で、委員から従来の試算結果に「現実的でない」との声が上がったことを受け、費用対効果を改めて試算した。従来の試算結果は1月の県議会常任委で示していた。

県は再試算にあたり、従来は公立大の平均(38%)を用いていた卒業生の県内就職率を、三重大工学部と同じ14・9%に変更したほか、入学者の定員を引き下げた。学部は工学部を想定した。

この日、委員からは「これで(県立大が)できるのかな、というのが正直な印象」「工学部生は県外に出て行く人が多い。県立大としての効果は厳しい」などと、新設に消極的な意見が相次いだ。

「ハコモノを作って禍根を残して良いのか」などとして、既存の大学に対する支援など、別の方策を提案する声も。「県内にとどまってもらうより、帰ってきてもらう仕組みをつくるべき」との声もあった。

一方で「日本を代表する企業がある北勢で産学連携が進めば、逆に県外から学生を呼び寄せることもできる」「三重にしかない大学を作れば学生の奪い合いを防げる」などと、新設に積極的な声もあった。

今月末にも開く次回会合では、委員らが県に提出する報告書の案をめぐって議論する。県は報告書などを元に設置の是非を判断する方針。判断の時期は「できるだけ早くしたい」とし、具体的には定めていない。