桑名のこども園に改善勧告 虐待など52件の不適切行為 三重県

【桑名市の担当者(右)から勧告の文書を受け取る加藤理事長=津市栄町1丁目で】

三重県桑名市北寺町の「長寿認定こども園」で保育士が給食を食べるよう園児に強要した問題で、県と桑名市は7日、園を運営する花園福祉会に対し、認定こども園法などに基づく改善勧告を出した。特別監査の結果、令和元年以降で18件の虐待を含む52件の不適切な行為があったと認定。当時の園長を含めて「10人程度」の保育士らが関与したとしている。

監査結果によると、身体的虐待は4件。保育士が園児の足を持って引きずって別の場所に移動させたり、健康診断で番号順に並べなかった園児の頭部をノートでたたいたりした。園児にけがはなかった。

心理的虐待は11件。保育士が4時間にわたって園児に給食を強要した結果として失禁させたり、園児に「一生来んといて」と言ったりした。トイレを1時間に1回に限るなど、3件のネグレクトがあった。

このほか、お菓子の袋を開けられない園児を居残りにするなど、15件を「子どもの心身に有害な影響を与える行為」と認定。強い口調で怒るなど、12件を「虐待などと疑われる事案(不適切保育)」とした。

さらに、当時の園長に対しては「虐待を防げず、発生後も迅速に把握しなかった」とし、園長自身もネグレクトをしていたと断定。副園長については「クラス担任を兼務し、職務を果たせなかった」と指摘した。

虐待の原因は「保育士だけでなく、組織の問題が大きい」とし、園長のマネジメントや職員間のコミュニケーションが不足していたと指摘。風通しの悪さや研修の少なさ、保育士の負担増なども要因に挙げた。

改善勧告では、2カ月以内に再発防止策を提出するよう求めた。改善がなければ改善命令も出すこともできる。県と市は「組織の問題が大きい」「再発防止を優先に考える」とし、保育士の刑事告発はしない。

この日、花園福祉会の加藤晶子理事長が津市栄町1丁目の県合同ビルを訪れ、県子ども・福祉部の脇田委子福祉監査課長や桑名市保健福祉部の新井崇史福祉総務課長らから監査結果を受け取った。

加藤理事長は報道陣の取材に「大変な迷惑と心配をかけた。子どもたちや保護者に深くおわびする」と陳謝。「監査結果をしっかり受け止め、安心して楽しく通ってもらえる園になるよう努める」と述べた。

問題をめぐっては、市が3月に保護者から相談を受けて把握。県と市が6月9日から園と花園福祉会に特別監査を実施し、保育士らへの聞き取りや録音データなどを元に虐待の有無や運営体制を調べていた。

市によると、園では問題の発覚以降、20人の園児が転園した。9月1日現在で138人が在籍している。不適切な行為に関与したとされる保育士のうち、3人が退職。他に3人が自宅待機となっている。