入所者に暴行、脇腹にあざ 三重県いなば園の職員2人、虐待疑いで調査へ

【虐待疑いの事案を発表する池田課長(左)と鈴木部長=県庁で】

三重県の外郭団体「県厚生事業団」は5日、障害者入所施設「県いなば園」(津市稲葉町)の男性職員2人が重度知的障害のある男性入所者に殴る蹴るの暴行を加えていたと明らかにした。男性が入所前に住んでいた市町が障害者虐待防止法に基づき、虐待の疑いで調査する方針。

県などによると、職員のうち1人は先月20日午前8時40分ごろ、施設の廊下で扉を蹴っていた男性入所者をモップの柄で制止。男性にかみつかれたことから馬乗りになり、脇腹などを殴った。

さらに、この職員が現場を去ってから数分後、別の職員が同じ男性入所者の足を蹴った。この職員は精神的に不安定な状態だった男性入所者に近づいたところ足を蹴られ、蹴り返したとみられる。

園は先月25日に内部通報を受けて事案を把握。施設内の防犯カメラを確認すると、一連の暴行が写っていたという。男性入所者の脇腹には暴行によるあざが確認された。骨に異常はなかった。

男性入所者の脇腹を殴った職員は施設の聞き取りに対して「行き過ぎた支援だった。間違っていた」と話し、暴行を認めているという。男性入所者を蹴った職員は「覚えていない」と話している。

いなば園は県が昭和52年に開設し、県が全額を出資する県厚生事業団が運営している。令和3年9月にも別の職員が入所児童に厳しい言葉で指導し、県が心理的虐待と認定していた。

園の鈴木真地域支援部兼管理部長は記者会見で「利用者に不安を与え、信頼を裏切る事態を招いた」と陳謝。自治体の調査を受けることなどを理由に、職員を刑事告発する予定はないと説明した。

県子ども・福祉部の池田和也障がい福祉課長は「再発防止を進める中で非常に残念。虐待と認定されれば指導する」と説明。事業団に出資する県の責任は「なかなか難しい」と述べるにとどめた。

園は虐待の疑いが浮上した当初、事案の詳細が判明していないことを理由に記者会見を開かなかった。この日の会見は、外部から要請を受けた県の子ども・福祉部が園に同席を求める形で開いた。