東紀州初、熊野に児童養護施設 来春にも供用開始 エレコム会長私財、隈氏設計 三重

【服部副知事(右から2人目)に施設の着工を報告した隈氏(中央)ら=県庁で】

エレコム(本社・大阪市中央区)は7日、三重県熊野市金山町内で児童養護施設などの建設に着手したと発表した。設計は国立競技場などで知られる建築家の隈研吾氏が手がけた。来春にも供用開始の予定。東紀州地域では初の児童養護施設となる。

同社などによると、施設の名称は「東紀州こどもの園」。児童養護施設のほかに、子育てなどの相談に応じる児童家庭支援センターも設ける。施設の面積は約800平方メートル。敷地面積は約2000平方メートルに上る。

施設は平屋で内外装にスギやヒノキなどの紀州材を使用。センターには地域交流のスペースも設ける。庭園は生垣で囲んで安全に配慮するほか、四季の移ろいを楽しめるよう敷地内に熊野桜などを植える。

同社の会長で熊野市出身の葉田順治氏が3年前、関係者から「東紀州でも児童虐待がある」と聞いたことが建設のきっかけ。知人の紹介で隈氏に設計を依頼した。隈氏が県内の施設を設計するのは初めて。

建設費を含む総事業費は約6億5000万円。うち約5億円は葉田氏が私財を投じた。県は国の交付金を活用して1億1500万円を補助する予定。社会福祉法人「聖マッテヤ会」が県の補助を得て運営する。

この日、葉田氏や隈氏らが県庁で服部浩副知事に施設の概要を報告。葉田氏は「思いつきで始めたが、皆さんの支援で着工できた。東紀州で収入を得て暮らしてもらえるような支援も考えたい」と語った。

隈氏は施設について「開かれた」と「守る」という2つのイメージを両立させたと説明。「子どもたちは安心して暮らせるはず。気持ちが癒やされ、柔らかさや暖かさを感じてもらえると思う」と話した。

同席した河上敢二熊野市長は「子どもたちに対する葉田会長の強い思いで実現した。大変ありがたい。児童養護施設の堅いイメージが柔らかくなれば、子どもたちの生活も大きく変わると思う」と語った。

服部副知事は「これまでの児童養護施設とは全く違うイメージ」と感想を語った上で「感謝の言葉しかない。県としても子どもたちに元気よく育ってもらえるよう取り組む。引き続きの支援を」と述べた。