人馬の安全求め建議 多度大社上げ馬神事巡り、三重県文化財保護審

【記者会見で審議の結果を発表する岡野会長=県庁で】

三重県教委の付属機関で、学識経験者らでつくる「県文化財保護審議会」(岡野友彦会長、18人)は3日、SNS(交流サイト)などで「動物虐待」との批判が上がっている多度大社(桑名市多度町)の上げ馬神事(県無形民俗文化財)について、安全面での改善などを求める建議を福永和伸県教育長に提出した。上げ馬神事を巡る審議会の建議は平成23年に続いて2度目となる。

審議会などによると、建議は「人馬共にけがのない安全な神事にするように」と要請。「動物愛護の精神に即してほしい」とし、馬への威嚇を根絶するなど、コンプライアンス(法令順守)の徹底を求めた。

また、文化財保持は多度大社が担う一方、氏子らでつくる「御厨総代会」が主催していることを踏まえて「ガバナンス(統治)が行き届いているとは認めがたい」と指摘。実施主体を明確にするよう求めた。

この日、審議会は県合同ビル(津市栄町1丁目)で本年度の初会合を開き、建議の提出を決定。県教委の担当者は、神事の廃止や文化財指定の解除を求める多数の声が県に寄せられていると報告した。

岡野会長は審議会後の記者会見で「神事の実施主体が明確でないことに問題がある」と指摘。「県教委は事態を重く見てほしい。乗り手も含めて安全な神事となるよう指導してもらいたい」と述べた。

文化財の指定については「主催者も課題を十分に認識していると思う。今回の件をもって解除することはない」との考えを示しつつ「来年の神事を注視する。主催者の対応を見極める」と述べた。

また、審議会は神事の現地調査を実施することも確認した。数人の委員が来年の上げ馬神事で安全対策などを確認する予定。審議会は平成24年にも上げ馬神事の現地調査を実施していた。

建議を受け、福永教育長は「社会的に議論になっていることでもあり、文化財保護を所管している教育委員会として重く受け止めている。今後、適切に対応していく」とのコメントを出した。

上げ馬神事は若者が馬に乗って坂を駆け上がり、その成否で豊凶を占う伝統行事。700年近くの歴史があるとされる。4年ぶりに開かれた今年5月は、転倒によって骨折した1頭が殺処分された。