AIは「一年以内」と試算 津の4歳女児死亡、終結期間で実態とずれ 三重

津市で母親(42)から暴行を受けた三女=当時(4つ)=が死亡した事件で、三重県が虐待疑いの通告を受けて使用したAI(人工知能)が、事案の終結までに要する期間を「一年以内」と試算していたことが、県への取材で分かった。実際の対応に要した期間はAIの試算結果を上回っており、AIの精度を巡る課題が浮かび上がった形。再発防止の検討では、こうした課題についても議論されるとみられる。

県によると、AIを活用した県の児童虐待対応支援システムは、過去に発生した同様のケースを元にした「一時保護率」や、児童が将来的に再び被害を受ける可能性(再発率)を算出する仕組みになっている。

これらに加え、AIは過去の事例を踏まえて事案の終結に要する期間の目安を試算していたことが新たに判明。県として直接の対応を終え、市町などによる対応に移した段階で「終結」とみなしているという。

今回の事案で県がAIを使ったのは「三女の両頬と両耳にあざがある」との通告を受けた昨年2月。児童相談所の職員がシステムに情報を入力したところ、AIは所要期間を「半年から一年以内」と試算した。

ただ、実際の対応には一年以上を要した。三女が死亡したのは通告から一年三カ月以上が過ぎた今年5月26日。この間、県は三女を一時保護せずに見守りで対応すると決めたが、母子に会っていなかった。

AIの試算結果と実態にずれが生じた詳細な理由は分かっていないが、システムに保存した情報の少なさが影響したとみられる。システムは約1万3千件の事例を蓄積。一件につき、21の入力項目がある。

県児童相談センターの中沢和哉所長は取材に「AIが試算した期間は(一時保護を見送った)当時の判断に影響しなかった。初動で重視する情報ではない」と説明しつつ、AIの精度には課題があると認めた。

県が使用しているAIを巡っては、三女の一時保護率を39%、再発率を13%と算出していたことが、これまでの取材などで判明している。県は第三者委員会を立ち上げ、当時の対応について検証を進めている。