G7交通大臣会合・持続可能性テーマに議論へ、地域課題の解決に期待

【JR西日本が亀山―加茂間の赤字を公表した関西本線=伊賀市内で】

G7交通大臣会合では、交通の「持続可能性」などをテーマに議論が交わされる見通し。公共交通の維持をはじめ、移動手段を巡って多くの課題を抱える県内にとっても、議論の結果が注目される。

会合のテーマは「イノベーションを通じた、誰もがアクセス可能で持続可能な交通の実現」。過疎地などで移動手段を確保する重要性を確認し、その実現に向けた政府の役割などについて議論するという。

7年前に長野県軽井沢町で開かれた交通大臣会合でも地域交通が議論されていたが、議論の中心は自動運転技術の実用化だった。それとは一変し、今回は交通の「持続可能性」を全面に押し出した。

交通政策を担当する県の担当者も「これまでは先端技術の議論に注目が集まりがちだったが、今回は過疎地の交通にスポットが当たっている」と説明。「先進国共通の課題なんだと実感した」と話す。

公共交通を巡る課題の一つがローカル線の存続。JR西日本は昨年4月、利用者の減少などによって維持が困難なローカル線の収支を発表したが、その中に関西本線の亀山―加茂間が含まれていた。

同区間の赤字額は令和元年度から3年間の年平均で16億2千万円。平成29年度から3年間の年平均に比べ、赤字幅は1億6千万円拡大した。沿線の住民からは、路線の存続を危ぶむ声が上がる。

この事態を受け、行政も対応に乗り出した。県は昨年6月、沿線の伊賀、亀山両市とJR西でつくる「四者協議」を設立。関西本線の利用促進に向け、事務レベルを含めて5回の会議を開いてきた。

議論を踏まえて県が着目したのは、鉄道の「潜在需要」。駅から勤務先へのアクセスなど、鉄道を使うに当たっての課題を解消すれば、通勤手段を自家用車から切り替えてくれるのではとの考えだ。

この潜在需要を調べるため、県は1千万円の調査費を盛り込んだ補正予算案を県議会に提出中。ある県議は「関西本線に関心がなかった県が危機を認識した。予算から本気度が伝わる」と評価する。

一方、県の担当者は「もう公共交通があって当たり前の時代ではない。存続には利用者の意識が不可欠」と指摘。「交通大臣会合を通じて公共交通の意義を広く認識してもらいたい」と期待する。