不当な暴力の成果を抑えられるか 防衛研究所山添氏、ウクライナ情勢語る 本紙政経懇話会 三重

【ウクライナ情勢について講演する山添氏=津市センターパレスで】

【津】伊勢新聞社政経懇話会は15日、三重県津市大門の津市センターパレスであり、防衛研究所米欧ロシア研究室長の山添博史氏(48)が「ロシア・ウクライナ戦争が提示する諸問題」と題して講演。「長い戦いで終わりは見えない。不当な暴力の成果をいかに抑えられるか」と見通しを語った。

山添氏は、ウクライナ侵攻の背景としてソ連解体により、本来支配下にあるべき地域での発言権や勢力圏に関する現状にロシアが「納得していなかった」と説明。中東欧諸国が北大西洋条約機構(NATO)に加盟し勢力を拡大する中、重視するウクライナでの影響力を強めようと南部クリミア半島の奪取や東部ドンバス介入などを経て、「今なら勝てる」と判断して全面侵攻を決意したと述べた。

占領者の放逐を目的とするウクライナに対して、プーチン氏が目的を明言していないことから「ロシア側がどこまでいったら勝ちかが分からない。限界不明の目的」として先行きの不透明さに言及。西側諸国の軍事支援や戦力投入に対し、核兵器や原子力を使った威嚇の示唆や総動員化、中国が関与する可能性など、激化への見通しを示した。

激化を踏まえた今後に向けて、「和平に至る前に暴力の拡大を抑えないといけない。拡大を止められなかったならば、不当な暴力の成果を抑えられるか。ロシアにいかに得るものを小さくできるか。成果が多いと暴力の成果を証明することになる」と持論を展開した。

山添氏は京都大大学院人間・環境学研究科博士号取得後、平成20年4月に防衛研究所に入所。ロシア安全保障や国際関係史を専門に研究し、4月から現職。