2023年5月3日(水)

▼東京・歌舞伎町のホストが自分に貢ぐ貧困女子らに売春を教唆した疑いで逮捕された。教唆容疑は実に60年ぶり。本来脅しを趣旨にした法の内容をやさしく示唆したことにも適用したことが異例の摘発になった

▼客待ちの女性らが並んだという新宿・大久保公園の風景のために賀すべし。警察は、これまでの客待ち容疑での女性摘発から「男の取り締まりにも力を入れていく」。売春防止法では、電話ボックスに貼るチラシを作成した印刷業者をほう助罪で逮捕したこともある。目的のためには法の趣旨などなんのその。手段を選ばぬのが日本の法の番人である

▼教唆罪で思い出すのは沖縄返還の密約文書を入手した毎日新聞記者西山太吉の逮捕。外務省女性事務官である公務員への教唆罪だった。最近はもっぱら「法の解釈変更」という手口で法の趣旨が次々変わっていく。集団自衛権の容認はその手で実質、憲法改正並の運用を可能にしたケース。検察官の定年を解釈で延長したこともある

▼日本学術会議の推薦会員を一部拒否したのは国会での首相の明言を覆した例。放送の政治的公平を判断するのに「全体」の観点から「個別番組」にも適用する解釈変更は、首相の意向を後ろ盾にした補佐官の横やりを可能にした形。県でも、都合の悪くなった規則は、別の規則を作って脱法行為をしていると、いつぞやの包括外部監査で指摘されていた

▼共同通信の憲法世論調査では、改憲機運高まらずが7割。が、憲法53条に基づく国会開会請求が無視され続けている。“日本流”改憲はされていないのか。憲法記念日に考えてみる。