<高校野球・挑戦の春>高田・文武両道、努力の成果を エースとともに成長

【3年生エース中山と練習前に言葉を交わす高田の稲垣監督(左)=津市内で】

2021年の春、高田(津市)硬式野球部は中高一貫6年制コースの生徒2人を受け入れた。そのうちの1人が、今年のチームの主戦投手中山勝暁だ。大学の医学部を目指す一方で直球の球速が最速146キロのプロ注目右腕中山の加入を機に野球部を取り巻く環境は一変。これまで対戦したことがない強豪に胸を借りる機会も生まれた。文武両道を貫くエースとともに成長を続けてきたナイン。この春は、それぞれの努力の成果を示す機会だ。

高田の稲垣聡支監督の日課の一つが、中山ら6年制コースの部員の学習進捗(しんちょく)状況の確認だ。会話を通じて成績への不安を感じ取ると、練習を切り上げさせたり、休ませたりした。「ちょっとでも状況が悪くなると野球をやることができなくなる可能性もある。それが一番残念だと思った」。

母校の野球部を率いて13年。創部初の甲子園を目指して指導に打ち込んできた。戦力としての中山に大きな魅力を感じているが、それ以上にそれぞれの進路選択に応じて3年制コースと6年制コースを設ける学校の特性上、「部活動もコース別があってしかるべき。逆に言うとそれが理想だと思いました」。

高田中の軟式野球部引退後、学業との両立の不安から硬式野球部入部をためらっていた中山には、塾通いの時間を確保するため、平日は週2回、テスト前は週3回、仲間より30分から1時間早く練習を切り上げることを提案した。指揮官の自分も「止めます、と言ったら、分かった、というしかない、っていう腹のくくり方をしました」。

6年制コースの生徒の硬式野球部入部は約5年ぶり。〝特別扱い〟への反発も予想されたがその心配は杞憂(きゆう)だった。中山とバッテリーを組む3年制コースの藤田輝主将は「部活をやりながら勉強も塾も行っているのが本当にすごい」と感心する。

「あいつ(中山)がプロ注目って言うので、甲子園に出るようなチームと試合をする機会ができた」とも話す。3月には第95回記念選抜高校野球大会を控えた東邦(愛知)と練習試合を行い6―5の九回サヨナラ勝ち。5回10奪三振1失点(自責0)のエースの力投に励まされ、4番打者の自分も1点を追う九回裏2死一、二塁にセンターオーバーのサヨナラ打を放った。

現在のところ勉強と野球の両立ができているという中山も「高田が自分にとって最高の環境」とうなずく。昨年夏右指の爪を割った影響で秋の県大会で、満足の行く結果を得られなかったことに悔しさを募らせ「皆と、春は東海大会出場、夏は甲子園出場という目標を掲げている。自分も勝ちにつながるような投球を」と誓う。