工業地は30年ぶり上昇 公示地価、県内住宅地と商業地は下落

【工業地の価格が22年連続で県内トップの四日市市午起2丁目】

国土交通省は22日、令和5年の公示地価を公表した。県内の平均変動率は住宅地、商業地とも31年連続で下落したが、下落率は2年連続で縮小。工業地の平均変動率は30年ぶりに上昇した。調査に当たった不動産鑑定士は「新型コロナウイルスによる地価への影響は、ほとんどなくなった」とみている。

■住宅地

平均変動率はマイナス0・2%で、都道府県の順位としては前年から4つ上げて29位となった。下落率は前年から0・5ポイントの縮小。前年は60地点だった上昇地点は、117地点に増加した。

調査対象とした25市町のうち、6市町で変動率が上昇。前年に上昇したのは川越町だけだった。四日市市と朝日町は3年ぶりに上昇。桑名市、鈴鹿市、菰野町は31年ぶりの上昇となった。

1平方メートル当たりの平均価格は3万8200円。最高価格は津市大谷町で、前年比1・8%(2千円)増の11万6千円。閑静な住宅地で需要が根強く、10年連続でトップとなった。周辺の宅地開発も進む。

■商業地

平均変動率はマイナス0・3%で、下落率は0・5ポイント縮小。全国順位は一つ下げて28位となった。前年は4点だった上昇地点は28地点に増え、下落も33地点減の49地点にとどまった。

調査対象となった20市町のうち、桑名市と四日市市の変動率が3年ぶりに上昇。鈴鹿市、菰野町、川越町は横ばいとなったほか、下落率が拡大した市町はなかった。前年は全ての市町で下落していた。

一平方メートル当たりの平均価格は6万8700円。最高価格は四日市市諏訪栄町で3・0%(1万2千円)増の41万6千円。駅前のマンション需要などを背景に、37年連続のトップとなった。

■工業地

前年はマイナス0・2%だった平均変動率はプラス1・1%に。前年は39位だった全国順位は26位となった。上昇地点がゼロだった前年とは一転し、比較可能な24地点のうち18地点で上昇した。

調査対象とした7市町ごとの変動率は、松阪市を除いて全て上昇した。桑名、伊賀両市は調査地点に加わってから初の上昇。四日市ジャンクション周辺は特に需要が高く、中南勢でも内陸部は改善している。

1平方メートル当たりの平均価格は2万2300円。最高価格は四日市市牛起2丁目で、1・9%(700円)増の3万8100円。国道23号へのアクセスの良さなどから22年連続でトップとなっている。

県内で調査の代表幹事を務めた片岡浩司不動産鑑定士は「地価の需要に力強さが出てきた。住宅地は北中勢でなく、伊勢市、松阪市といった南部の中核都市でも地価の改善が広がっている」と話す。

工業地がプラスに転じた理由については「通販などの拡大に伴う物流の需要が引き続き増加していることに加え、製造業を中心にコロナ後を見据えた設備投資が出始めたことなどが影響した」と分析した。

一方、住宅地や商業地で下落が続いていることには「北中勢は他の地方圏と同じレベルに達しつつ、南部での回復が遅れている。過疎化が深刻な地域では今後も上昇は見込みにくい」と語った。

公示地価は国交省が定める標準地について、毎年1月1日時点の地価を公示する制度。土地取引や固定資産税算定の目安となる。県内では38人の不動産鑑定士が25市町の432地点を調べた。