海底で1年熟成、日本酒引き揚げ 苦味なくなりまろやか、志摩の新たな特産品へ 三重

【1年ぶりに英虞湾から引き揚げられた海底熟成酒(伊勢志摩ツーリズム提供)】

【志摩】「英虞湾海底熟成酒プロジェクト」のメンバーらがこのほど、志摩市の英虞湾に沈めて海底で熟成させていた日本酒を1年ぶりに引き揚げた。志摩市の新たな特産品として販売し、地元で開く観光ツアーにも活用される。

令和2年に、着地型ツアーなどを手がける旅行会社「伊勢志摩ツーリズム」(伊勢市)と地元の漁業関係者らが、東海3県や経済団体などでつくる中部国際空港利用促進協議会と連携し、コロナ後を見据えた新たな観光の魅力づくりの一環として、付加価値の高い商品を作ろうとプロジェクトを立ち上げた。

海底熟成酒は沈没船から引き揚げられたワインがおいしく変化していたという実話から考案された熟成方法。プロジェクトでは約2年前に実証実験を行い、県内酒蔵10社の日本酒250本を7カ月ほど英虞湾に沈めた結果、苦味成分がなくなりまろやかになっていることを確認したという。

昨年から志摩市の「べんのや酒店」が参加。海底熟成酒用に日本酒の「半蔵」と「作」を選び、2月に計150本を英虞湾にある真珠養殖のいかだにつるして水深20―25メートルに沈めた。実証実験の時よりも期間を長くより深い場所に沈め、酒の瓶を遮光シートで包んだり、栓をろうで密封したりして見栄えも良くなるように工夫した。

【英虞湾に沈めた日本酒を引き揚げる関係者ら=志摩市で(伊勢志摩ツーリズム提供)】

今回は70本を引き揚げ、関係者が試飲を実施。日本酒ディレクターの田中順子さんが1年間冷蔵保存した日本酒と海底熟成した日本酒を飲み比べ、「海底熟成酒は角が取れて丸みがありまろやかになっていて、穏やかな甘みが長く続く」と味わいの変化を解説した。

べんのや酒店では、50本(1本720ミリリットル、税別1万円)を4月から販売予定だが、すでに予約で完売するほどの人気。伊勢志摩ツーリズムは、熟成酒を引き揚げて近くの島で焼き貝と一緒に味わい、サンセットクルーズも楽しめるツアーを始めている(料金は1人1万5千円)。

伊勢志摩ツーリズムの安和彦営業統括部長は「地元の漁業関係者や酒蔵、行政などに関わってもらい、やっとここまでこれた。海底熟成酒が地元の名物になり、みんながハッピーになるようなお土産になれば」と話した。

問い合わせは伊勢志摩ツーリズム=電話0596(20)2290=へ。