2023年2月10日(金)

▼漫画『週刊少年ジャンプ』は発行部数が一時3百万部を突破。お化け週刊誌と呼ばれた。人気作を連発。初期の『男一匹ガキ大将』から『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『幽遊白書』『ドラゴンボール』と次々に夢中になり、発売日に書店へ走った

▼『ドラゴンボール』終了から次の人気作品『ONE PIECE(ワンピース)』連載開始までの2年で同誌から離れたのは他誌の作品への傾倒だが、『ONE PIECE』のトップページがどくろマークの海賊船だったことで腰が引けたことも否めない。娘が単行本をそろえ始め、秘宝を巡る夢への冒険や仲間との友情を描いた海洋ロマンと知っても、最初の印象はぬぐえなかった

▼広域連続強盗事件の首謀者が名乗る「ルフィ」が『ONE PIECE』の主人公の名前だと知っても、イメージ的に違和感は少なかった。フィリピンの入国管理移設で当局に賄賂を贈り、スマホやタブレットで国内に犯罪の指令を出すというのも屈折したロマンか。何とも漫画チックで似たような漫画は何度も見た

▼物語の主人公を名乗る犯罪者でよく知られるのはグリコ・森永事件だ。江崎グリコ社長を誘拐して身代金を要求したのを始め、企業を次々に脅し、煙のように消えてしまったのは名張出身の作家江戸川乱歩が生み出した小説の中の怪盗・怪人二十面相をもじった「かい人21面相」

▼度重なる現金受け渡しの場に姿を見せず小説同様、警察を嘲笑し手玉に取った。深夜の洞窟でろうそくの明かりで小説を書いたという伝説のある乱歩は泉下でにんまりしているかもしれない。