2023年1月19日(木)

▼障害のある80歳の女性の生活保護費の支給を停止した鈴鹿市が取り消しを求められて敗れて、不服だとして名古屋高裁に即時抗告を出して棄却されたが、報道機関の問い合わせに、市は「担当者が不在でコメントできない」としている

▼全ての報道機関に対してではないようだが、いわゆる問題企業などでしばしば見かける事実上の拒否に、地方自治体が倣うとは思わなかった。即時抗告の棄却は十日付。生活保護世帯との係争にコメントを用意する時間は十分にあったろう

▼コメントした報道機関への内容も「今後は本訴に注力したい」。戦闘意欲をみなぎらせている。司法の判断が出た場合、例え不満足でも、庁内や弁護士などに相談して対応を決めたい、というのが一般的。本訴になれば、手続き的には議会の了解も取り付けなければなるまい。始めから本訴でいくつもりだったのなら、即時抗告は法廷戦術ということか

▼訴えているのは当の女性と難病の次男。名古屋高裁は即時抗告棄却理由について「生活保護が停止されれば、健康で文化的な最低限度の生活を維持できなくなることは明らか」。市の即時抗告はそうした趣旨で短期の結論を求めたのではなく親子を兵糧攻め、すなわち裁判を長引かせて継続できないようにする狙いなのかもしれない

▼市は車の運転記録を提出しなかったことを生活保護費支給停止の理由にした。支給条件は時代とともに変わる。市の主張は憲法の「健康で文化的な最低限度の生活」に関わると高裁は示唆しているようでもある

▼市は三権分立の精神も学び直さなければなるまい。