2023年1月1日(日)

▼今年はうさぎ年。その性質から多産・豊穣・性のシンボルであることはよく知られるが、えとと組み合わせた十干でいえば「癸」、すなわち最後の順番に当たり、一つの流れが終わり、次の段階へ移ることを意味する。60年目の区切りの年というわけだが、現実社会はますます区切りのない混迷の時代に入っていく感じがする

▼月にウサギが住むという伝承は世界各国に見られるが、月旅行が現実になる時代。信じる人はもういないだろうが、神の使いという説はどうか。いなばの白うさぎは、ワニ(サメ)をだまして赤裸にされるが、痛みで横たわっていると嫁取りに向かう大國主命のたくさんの兄たち(八十神)にさらにひどい目にあわされ、最後に大國主命に助けられる

▼うさぎは八十神の嫁取りの失敗と、大國主命の成功を予言し、末弟大國主命の国作り伝説を正統化し、神の使いへと昇華する。今昔物語は、行き倒れの年寄りのために煮えたぎる鍋に我が身を投じて食としてもてなす話が出てきて、貧しい老人変じた帝釈天に月に封じられる。似た話は中国はじめ東アジアに広がる

▼山の木をかじり、農作物を食い荒らして農家から嫌われたうさぎが山の神の使いとされるのも面白い。交通・通信網の発達で世界はどんどん小さくなるが、人間の精神文化、規範などはむしろずたずたに引き裂かれていっているのかも知れない

▼あやかるなどということがほとんど期待されなくなった現代。せめて「少子化対策2年目」は、うさぎ年を機に精神論ではなく、効果的な具体策を講じてほしいと願う一年の初めである。