<まる見えリポート>「ボトルtoボトル」推進 三重県内、プラごみ再資源化へ新たな動き

【水平リサイクルを活用した商品コーナーを紹介するぎゅーとらの社員=伊勢市のぎゅーとらハイジー店で】

SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを背景に、プラスチックごみの再資源化に向けた新たな動きに注目が集まっている。飲料大手・サントリーグループでは、回収した飲料用ペットボトルをそのままペットボトルに再活用する「ボトルtoボトル」による水平リサイクルの取り組みを推進。県内でも流通チェーンが協力に名乗りを上げるなど、活発な動きを見せている。

■   ■

比較的安価で加工しやすく、利便性や衛生面などの理由から飲食店やスーパー、医療現場など、今や日常のありとあらゆる場面でなくてはならない存在となっているプラスチック製品。一方で、使用後の廃棄物である「プラスチックごみ」は海洋汚染の原因としても大きく問題視されている。

WWFジャパンによると、全世界の海には1億5千万トン以上のプラスチックごみが存在し、さらに年間約800万トンのごみが海に流出しているとされている。

プラスチック製品の中でもペットボトルはリサイクル率が高いとされている。「PETボトルリサイクル推進協議会」によると、令和3年度の国内での回収率は94%で、アメリカの18%、欧州の42%と比べても高い数値を示している。

一方、食品用トレー容器や衣類の繊維など他製品にリサイクルされると、その後は再利用されることなく焼却や埋め立て処分とされることになる。こうした中、注目を浴び始めているのが水平リサイクルだ。

水平リサイクルは、回収した製品を再資源化し、再び元の製品の形で利活用する取り組み。従来のリサイクル方法と比べて半永久的に資源を循環活用することができ、新たな資源の投入を抑えることで二酸化炭素排出量の削減につながるため、ペットボトルに限らず、アパレル大手ユニクロによるダウンジャケットや、生活用品大手ユニチャームによる紙おむつなど、幅広い業界に拡大しつつある。

サントリーグループは平成24年、国内清涼飲料業界で初のリサイクル素材100%のペットボトルを導入したことを皮切りに技術革新を進め、水平リサイクル実用化を進めてきた。

同グループが令和元年に策定した「プラスチック基本方針」では、2030年までに使用する全てのペットボトル素材をリサイクル素材や植物由来素材にして、化石由来原料の新規使用をゼロにする「ペットボトルの100%サステナブル化」を目標に掲げている。

■   ■

同グループは11月29日、三重県伊勢市を拠点に県内で食品スーパーを展開する「ぎゅーとら」と水平リサイクル推進に向けた協定を締結した。

協定では、同店舗敷地内に置かれた回収機「リサイクルステーション」を通じて回収したペットボトルを、同グループが提携する津市のリサイクル工場に集約。「プリフォーム」と呼ばれる原料への加工を経て、再びペットボトルとして活用される。

ぎゅーとら社によると、昨年の店舗全体のペットボトル飲料の販売量は約1200万本、回収量は約383トン。同社では回収と引き替えにもらえるポイントをためて金券と交換できるポイントカードを活用し、店舗売り場には専用コーナーを設置するなど取り組みの普及を進めている。

同社の清水秀隆社長(63)は「地域と環境を考えながら貢献できる商品を買ってもらえるよう全店で取り組みたい」と意欲的だ。

同グループによると、昨年の商品全体でのリサイクル活用率は37%で、年内には50%を目指すとしている。サントリーHDサステナビリティ経営推進本部の光森秀典課長(48)は「地域住民との一体での取り組みが重要。全国に推進して持続可能な社会を実現したい」と話していた。