リニア駅3候補地 JR東海に判断委ねる 

【リニア県内駅候補の3エリア】

リニア中央新幹線の県内駅について、三重県は亀山市から提案された三つの候補地を一つに絞り込まないままJR東海に提案することを決めた。それぞれの候補地を縮小して提示することにはしたが、事実上は駅位置の選定を同社に委ねた格好だ。他方で今後は県内駅へのアクセスが大きな課題となるが、県内では在来線の存続が危ぶまれるさなか。県内駅に停車する本数などによっても利便性が左右されることになる。県全域が「夢の超特急」によるメリットを享受できる環境づくりのハードルは高そうだ。

「検討のステージから行動のステージに移る」。今月4日に津市内で開かれたリニア建設県促進期成同盟会の臨時総会。一見勝之知事は主催者あいさつで、JR東海に提示する県内駅の候補地を盛り込んだ決議への期待感を示した。

櫻井義之亀山市長も総会後の取材に「長く(県内駅の誘致に向けて)活動してきたので感慨深い」と喜びを語った。一見知事は総会後の記者会見で「必ずしも既存の駅で考える必要はない」などと述べ、新駅の可能性にも言及した。

一方で県内駅にそれほどの期待を寄せつつ、候補地に対する県の判断は理解を得にくいものとなった。利便性や発展性の観点から、3つの候補地に「大差がなかった」と結論づけ、3つともJR東海に提示することにした。

一見知事は他県でも複数の候補地を提示した例があったと強調するが、調査に1700万円を投じたほか、市の提案があってから結論を出すまでに約1年間を要した。ある県職員は「税金の無駄遣いと言われても仕方がない」と指摘する。

ただ、県は亀山市からの提案をそのままJR東海に提示するわけではない。同市から提案を受けた3つの候補地について、それぞれ面積を2分の1から3分の1ほどに縮小。JR亀山駅を含む市中心部を候補地から除いた。

関西線と紀勢線が接続する亀山駅を、なぜ候補地から除いたのか。県は「市中心部で大規模な工事をすれば、住民生活に影響を与える」と説明。ある県幹部は駅周辺の土地所有者が多く、用地買収が難しいことにも配慮したと明かす。

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「全ての県民がリニアのメリットを享受できるようにする」という県の目標は高い。県内駅の利便性次第では、多くの県民が「名古屋駅からリニアに乗れば良い」と考え、県内駅の利用が極端に少なくなる可能性もあるからだ。

南北に長く、鉄道の利便性も良いとはいえない県内で最大の課題は県内駅へのアクセスだろう。鉄道は手段の一つとして考えられるが、15年後と想定されるリニアの全線開業までに県内の在来線が全て存続しているかは未知数だ。

その一例として、亀山―加茂間を結ぶJR関西線の存続が危ぶまれている。JR西日本が今年4月、利用者の少ないローカル線として公表した路線の一つ。令和2年度まで過去3年間の平均収支は15億7千万円の赤字だった。

伊賀市などでつくる「複線・電化を進める会」は昭和60年代から複線と電化を要望してきたが、依然として実現せず。近年は団体名から「複線」を除いた。市の担当者はリニアと在来線の相乗効果に期待しつつ「まずは関西線の利用を伸ばさなければ」と危機感を抱く。

在来線の利便性が向上しなければバスや自家用車による県内駅へのアクセスがメインとなるが、それにも駐車場やバスターミナルといった周辺の整備は必須。県としても、多額の支出を余儀なくされることは想像に難くない。

一見知事は1日のリニア推進本部会議で「リニアを活用した将来像」の検討を指示したばかりで、まだ具体的なビジョンは見えてこない。ある県幹部は「県内駅の場所が決まらないと、具体的な検討には入れないだろう」と語る。