2022年10月10日(月)

▼東京オリンピック・パラリンピックをめぐる汚職事件で逮捕された出版大手KADOKAWAの角川歴彦被告が、起訴とともに会長職を辞任したことについて、同社役員を経て幻冬舎を創立した見城徹社長が本紙インタビューで、同容疑者の功績、能力をたたえ、辞任で影響力を失う打撃を惜しんだ

▼一方で、取締役にとどまることには責任を取ったと言えるか疑問と驚いてもいた。同じ業界の近い関係の人間として、思いは千々に乱れるのだろう。逮捕前の取材に「自分たちの精神を汚してまでも仕事をしろなんて言いません」と言い切っていたが、容疑については法廷で潔白を明らかにしていくという

▼「知らなかった」「自分に決定権はない」などを主張していくつもりなのだろう。報告は受けたとか、カネを渡した趣旨が違うとか、収賄側の大会組織委員会元理事が見なし公務員だとは一連の事件発生後に知ったとか言っていた。将棋にたとえて「5手先が見える」が口癖だったというが、素人将棋は「3手先が読めれば勝つ」と言わる

▼経営者の言葉として忘れられないのは、ソニーの会長として長時間のマラソン総会を終えた大賀典雄だ。疲れたでしょうというラジオのインタビュアーに「これが仕事」と言い、ひと言でも自分が疲れると言ったり、嫌そうな顔をすれば、部下が気を遣ってよからぬ動きもしてしまう、と

▼企業が総会時間の短縮を競い、総会屋工作が問題になっていた時だ。「スポンサーになれたらいいな」と社内で言ったという角川被告に、経営者として、どれだけの先が見えていたかどうか。