2022年9月13日(火)

▼昨年12月のNHK番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」に「重大な放送倫理違反がある」とする意見書を放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会が公表した。「半ば捏造(ねつぞう)、重過失に匹敵」として「重大な放送倫理違反がある」

▼インタビューを受ける男性の画面で「五輪反対デモに参加しているという男性」「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」など、虚偽の字幕を入れた。顔を出すことを了承していたのにボカシを入れ、いわくありげな人物に印象づけたことも、NHKの内部調査で報告されている

▼なぜ起きたか。BPOは「取材の基本を欠いて事実確認をおろそかにした」と、未熟さに原因を求めた。NHKは平成28年の「出家詐欺」報道でBPOから「放送倫理上重大な問題」と指摘されて、再発防止に入念なチェック機構を整備した。今回機能しなかったのは①デモや社会運動への関心の薄さ②実績あるディレクターの作品―のためなどとしている

▼番組は、五輪公式記録映画の映像がふんだんに使われ〝共同制作〟の趣。発注者の国際オリンピック委員会の承諾は必要ないか。使い方のすべてがNHKにおまかせだったとは考えにくい

▼問題の字幕も映画撮影の画像。NHKは当初、現場責任者に内容を確認したとの釈明をしたが、抗議を受けて即座に訂正。映画制作者側に一切の責任がないことを付け加えた

▼あのNHKが、である。BPOは、何もかもNHKの「お粗末」が原因とした。それ以上踏み込めない闇が、五輪を契機にここでも噴き出した気がしなくもない。