2022年8月24日(水)

▼4期16年、愛知県知事を務めた鈴木礼治氏の訃報が本紙社会面のどん尻で、一段の小さな記事として載っている。写真はない。桑名高校出身。大村秀章同県知事が「笑顔と愛すべきキャラクターが忘れられない。鈴木元知事が作られた様々な愛知発展のための礎をしっかり生かし」

▼大きな足跡を残したということだろう。扱いが非礼という気もするが、隣の大県の大きな足跡が、県の利害と必ずしも一致しない。例えば「笑顔と愛すべきキャラクター」だ。中部国際空港建設計画の候補地選考で、木曽三川河口部を推す県と、常滑沖を主張する愛知県が対立した。三重県の最終決定を審議する三重県議会を前に、鈴木氏は県議会幹部らに電話をかけまくった

▼相手の懐に飛び込むのが巧みなのも「愛すべきキャラクター」だろう。損得計算を含め日々軟化していく。そんな感触を記者団に話す。中部空港絡みの記事は愛知県政に主導権があったから県軟化の観測記事が躍動する。どうなっているんだという県議会の質問に当時の田川亮三知事が「黙っとれと(愛知県知事には)言った」

▼前任の桑原幹根知事にも名古屋五輪の誘致失敗や、越県合併で煮え湯を飲まされたが、木曽岬干拓地の県境問題で、目安とされた愛知県分「15ヘクタールプラスアルファ」を大幅に超え80・9ヘクタールで決着させたのは鈴木元知事である

▼新東名・新名神、中部空港、リニア新幹線を「三点セット」とし、愛知万博も成功させた。大村知事としては「発展の礎」を築いたことになるのだろう。県がその陰でどんな思いをしたかは考えることもあるまい。