2022年7月21日(木)

▼県議会が稲森稔尚県議の新型コロナウイルス感染を発表した。連日千人を超す感染者が出ているのに、現況はますます霧に包まれていき、その中を手探りで歩いているもやもや感が拡大していくのは筆者だけではあるまいが、久々にすっきりした気がする
▼議会が定めた感染症対応マニュアルに基づく実名公表という。「議員本人又は家族の了承を得て、当該議員の氏名、選挙区を公表する」という内容。情報の原則公開と個人情報保護のただし書きのある法の趣旨に照らして申し分ない気がするが、この程度の公表もこのところめっきり減った
▼議会が自ら発表するのはご随意にということだろう。当初議会マニュアルと変わらなかった県の姿勢は大きく転換して我関せずとなった。医療機関のクラスター(集団感染)が発表されることはなく、県立病院の医療従事者も例外ではない
▼県は非公表の理由に感染に伴う差別の抑制をあげている。治癒して地域、職場に復帰した元患者に「笑顔でお帰りなさいと言える社会」をマニュアルで求めているが、実際はひそかに職場を離れ、いつの間にか復帰している形が横行。潜在的差別は蓄積されたままだ
▼「コロナの差別は沈静化している」と、三重テレビの元ハンセン病患者の特集で、支援弁護士で知られる徳田靖之氏が語っていた。一日何千人の感染者が出て、自身の感染が現実になった途端、差別発信が止まったという。
▼感染者をどう守り、県民の不安をどう取り除いていくか。法の趣旨に基づき、県は状況に合わせ不断に努力を重ね、安易に思考停止してはなるまい。