2022年7月1日(金)

▼職員の1億5千万円以上の着服が発覚した三重県の南伊勢町が、当人を懲戒免職処分にした。謝罪会見で上村久仁町長は「全容解明としかるべき対応」を語り、刑事告訴の手続きを進めるとしていたが、そのいずれも実現していないうちの手早い処分で「社会的な影響の大きさを考慮した」と説明している

▼県教委の不祥事のように1年以上経過してから処分を発表するのでは不祥事が何だったか思い出すのも一苦労で、ほとぼりも冷めがちだが、全容解明は見通せず、告訴も未定なままの早々の本人の免職は他をうやむやにしてしまわないか

▼平成29年以前から始まる5年以上にわたる巨額の着服事件というのに、調査機関を設けるのかどうか。第三者機関を設置しても本来大げさとはいえない。着服の張本人が分かっている以上、急ぐべきは免職より「全容解明」と「しかるべき対応」であることは町長の言を待つまでもない

▼言うまでもなく1億5千万円の巨額着服は、唐突に起きたことではない。町立南伊勢病院の前任地上下水道課で500万円を超える着服をし、発覚しなかったことが呼び水となっている可能性は強い。「システムに詳しい担当者がほかにいなかった」という病院での着服理由が当てはまるのかどうか。病院での巨額着服が発覚するまでの5年以上、表に出なかったのはなぜか

▼神は細部に宿る、という。細かい部分をおろそかにすれば、全体の完成度も落ちるという建築や芸術作品の警句だが、悪魔もまた細部に宿るというのは危機管理上の鉄則だ。着服事件が町の中で起きた細部であることは間違いない。