2022年5月26日(木)

▼さわやかな笑顔満開に「県庁が必ずしも応えていなかったことを現場や当事者の思いで決断した」と最後の記者会見に言ったのは鈴木英敬前三重県知事だ。具体例にあげたのが土砂条例の制定

▼地元から搬入規制の陳情を受けても、議会が請願採択しても、現行法令で十分だと動こうとしなかった県が、現地視察した知事の条例必要の発言でたちまち「生活環境の保全に(新条例が)必要」の大合唱に転じた。前知事が「決断の実行の毎日」と回顧する中で例示するのにふさわしい条例だといえる

▼が「決断」はともかく「実行」にまで踏み込んだのは早とちりではなかったか。決断は知事ができても、実行するのは県職員だ。その県職員が条例制定から2年。運用が間違っていたとして「信用失墜に当たる」「申し訳ない気持ちでいっぱい」と陳謝した。本心ではあろうが、現場は議会の請願採択を無視した伊賀地区。偶然かどうか。事実は小説よりも奇なり、である

▼問題は、埋め立て工事に許可が必要か不要かの二者択一。業者の窓口である出先の伊賀農林事務所が本庁の担当部門、環境生活部と協議したあげくの間違いで、外部の指摘があるまで気づかなかった。こうした場合に使える言葉か自信はないが、組織ぐるみである

▼一般論として、工事には許可が必要なのが普通で不要というのはほとんどない措置である。むしろ、条例や要綱にないことまで、行政指導だとして〝許可〟を促してくるのが役人根性というものだ。土砂条例では、それを覆す何が起こったのか。やる気のなさが引き継がれていただけかもしれない。