2022年5月7日(土)

▼メディア批判の一つに「記念日報道」というのがある。終戦特集などがその典型か。普段は見向きもしないくせに、その日の前後だけ、洪水のように関連報道が集中するというのが代表的批判。批判の対象は「普段見向きもしない」ことか「洪水のような報道」かは諸説、分かれる

▼大型連休中の3日、憲法記念日に、朝日新聞阪神支局では昭和62年に「赤報隊」を名乗る人物の襲撃を受けて死亡した記者を弔う祭壇が設けられ、関係者が手を合わせた。昭和の日の4月29日は、乗客7人が死亡した関越自動車道の高速ツアーバス事故から10年。遺族らが事故現場を訪れ、犠牲者を追悼した

▼5日の子どもの日に合わせ、国が年少人口(ゼロ~14歳)数を発表するのも、記念日報道の趣旨と同じだろう。国立成育医療研究センターは新型コロナウイルス流行の影響で、小学校高学年から中学生に特化し、その1~2割にうつ症状が見られるという調査結果をまとめた

▼家庭内で抱え込む傾向が浮き彫りになり「正しく理解し、SOSを出してほしい」と担当者が呼びかける。注目度に便乗して広く伝えたい思いがあるからだろう。去る者は日々に疎しは中国の古詩の一節。親しい者でも遠のけば疎遠になっていくの意味。ドイツにも、視界から離れれば心も離れる、のことわざがある

▼その日、その時期だけでも過ぎ去った事件、事跡を思い起こし検証や観測を続けていくことに意味がないとは言えない。県からは、特にこの日に合わせた発表はなさそうだ。子どもについて、国や他県ほどには関心がないのだろう。