2022年3月31日(木)

▼「神は細部に宿る」という。細部まで神経が行き届いてこそ全体の完成度は高まるの意味。関連し「悪魔は細部に宿る」ともいう。細部にワナや不可解な要素が隠されているということ。簡単そうに見えて、実は完成までに時間や労力が必要なことも指す

▼RDF(ごみ固形燃料)運営協議会が最後の総会を開き、一見勝之知事が「行政の責任や判断の重みを痛感する事業だった。初期の検討に甘さがあったと言わざるを得ず、関係市町に大きな財政負担をかけることになった」。全体の総括としてはその通り。が、続く「安全を根底にした事業を考えるべき」は神か、悪魔か

▼考える過程で、RDFほど安全で効率的な素材はないという話だった。その焼却熱で電気を起こす事業は、廃棄物処分場建設に悩む市町村に救いの手を差し伸べることであり、一般ゴミ処理を管轄しない県がその垣根を越えて乗り出すのにふさわしいとし、十センチほどの円柱に固めた試作品のRDFを記者クラブに配ったものだ

▼試作品は安全だが、水を含んだ一般ゴミが熱を発するなどは、一般ゴミの経験のない県は思いもしなかったであろう。ゴミという素材の安定性も未知の分野だった。新事業には付きものの壁でもあるが、県は机上の計画だけで、RDFも一般ゴミの研究、検討もしないまま突き進み、誤算の数々に直面した。当然である

▼思えば県の収益絡みの事業はいつも竜頭蛇尾、尻切れトンボで、ほとぼりを冷まして最後を税金で尻を拭いてきた。「安全が根底にある」事業などない。考えるべきは、触らぬ神にたたりなし、である。