2022年3月12日(土)

▼桑名市長島町の「なばなの里」で、しだれ梅が見頃。津市郊外の幼木も五分咲き程度でこの一両日で一気に花開いた。梅と言えばやはり菅原道真の「東風吹かばにほひをこせよ梅の花あるじなしとて春を忘るな」。京都の家の前で梅に語りかける挿絵とともに思い出す

▼「東風」は「こち」と読み、冬から春にかけての東寄りの風の意味だが、実際の方向はさまざまで、冬から春への変わり目に吹く春一番は強い南風。いずれも漁師に恐れられ、東風時化などの言葉もある。志摩地方ではイナダ東風の名が。イナダはブリの幼名で、熊野灘沿岸に産卵をひかえた脂のほどよくのったブリが訪れたが、資源開発として20年ほど前から志摩半島沖でイナダを放流し、再捕状況を調べている

▼先の五分咲き梅が点在する津市郊外の公園では、この日の風が海風に変わった。日中は暖まりやすい山の空気が上昇して海から風が吹き込み、夜は逆となるが、大きくは季節風も同じで、冬は冷めにくい海に向かった山側から空気が流れ込み、太平洋側では北西の冷たい風になる。夏は逆だが、蒸し暑い日本の夏はあまり目立たないと言われるが、春先は変わり目がはっきりしているのかもしれない

▼ベンチで新聞を開くと、つい先日、風で飛ばされた新聞を追いかけて走った方角から今日は柔らかな風が吹いてくる。いつも足元に訪れてはさえずるヤマガラの目の周辺の黄色いくま取りが、やや白みがかってきた気がする。三寒四温。梅を除く小枝はまだ葉を落としたままだが、コロナ禍の中で、3度目の春の足音は確実に近づいている。