2022年2月2日(水)

▼県の危機管理体制が、前知事の防災重視から一見勝之知事による国家安全保障とのリンクへの質的転換を遂げるのではないかという観測に影響されたか。現職の大森正信町長が再選を果たした大台町長選で、3候補が災害対策に直接触れなかったことに感慨ひとしお。平成は遠くなりにけりである

▼大台町が同名の旧町と宮川村が合併して発足したのが平成18年。その2年前に台風21号の集中豪雨が宮川村を襲い、土石流や大規模な地滑りが住宅を襲い、6人の死者と行方不明1人という県内最大の被害を出した

▼50年、100年に1度起こるかどうかの災害と言われ、激甚災害に指定されて復旧工事は進んだ。全国有数の多雨地帯であり、異常とされる集中豪雨だが、住民の1人は「この程度の雨は何度も経験している」として親戚宅への避難を断り、犠牲になった

▼それまでの台風による地盤の劣化など、自然環境面の分析、解説は記録されたが、集中豪雨との違いが明確に説明されたわけではない。当日は計測機器の相次ぐ故障が指摘され、避難勧告の遅れとどう関連したか。天災と人災の区別も、今では分からなくなっている

▼大台山系は再び沈黙した。16年災害を教訓に行政は連続、時間雨量に基準を設け、住民への避難勧告や県道通行止めなどの体制を取ったが、地滑り活動は以来、ない。機能するかは分からないということである

▼大森町長が公約に掲げた「住み慣れた地域でいつまでも安心して生活ができる」の具体策は「高齢者対策」。天災は忘れた頃にやってくるという言葉がふと頭をよぎらぬでもない。