2022年1月24日(月)

▼作家佐藤愛子さんにエッセイ集『古川柳ひとりよがり』がある。江戸期の川柳を引きながら人情、行動など、人間の本質において現代人と変わりないことをつづる。例えば古川柳「船頭もあとの婆あは義理で抱き」。項の題は「これが男」

▼表現に問題のある部分は文学・芸術作品であることでお許しいただくとして、乗り降りで揺れる渡し船で、若い女性なら「おっと気をつけな」と、この時ばかりと危なくもないのに優しく抱いて乗せる船頭も、お年寄りなら仕方なさそうに介添えするという意味。佐藤さんは、乱気流で大きく揺れた飛行機内の出来事に皮肉な目を注ぐ

▼「キャー」「助けて」などの悲鳴をあげる5、6人の若い女性客に、男性3人組が声をかける。「お水もらってあげようか」「アハハハ大丈夫、大丈夫、落ちへん」「保証する」。果ては「ぼくがついている」

▼「我ら初老はムクれずにいられない」と佐藤さんら同行の友人たち。「何がアハハハ大丈夫だ」「飛行機の揺れぐらいでキャアキャア情けない」「私ら焼夷弾の中を赤ん坊おんぶして、火叩き持って走った」。そして先の句を引用し「『船頭は』ではなく『船頭も』というのがニクらしい」

▼新型コロナ感染拡大で、県内は再び「まん延防止等重点措置」。飲食店に営業時間短縮要請。酒類提供は「経済を回す」ためと認めた上で、県民に「マスク会食」と「黙食」の徹底を強く呼び掛けた。知事は「私の話を聞いてもらえば被害を最小限に抑えることができる」

▼「一見勝之、男でござる」ではあるが、佐藤さんの「これが男」とは別の話。