2021年12月16日(木)

▼国が子ども政策の司令塔として設置する新組織の名称が、これまで伝えられていた「子ども庁」から「子ども家庭庁」へと変更されることになりそう。名称が変わると、中身も違ってくるものに違いない

▼自民党保守派への配慮という。子どもの居場所は家庭にあり、健全な家庭を築くことが第一、という発想だろう。虐待事件などのたびに、その家庭が子どもにとって必ずしも安全、安心、安息の場でなかったことが明らかになり、「家庭は戦場」という虐待児童の意見が新組織設置の原点だったが、「家」中心の伝統的思考が依然強いことをわれわれはまたも見せつけられる

▼鈴鹿児童相談所が一時保護していた小2児童を家庭に戻した直後に父親から椅子で殴られるなどした事件でも、一見勝之知事は「父親の(暴力を振るわないという)約束が履行されなかった」のが「残念」なのであり、児相の一時保護解除は「適切だった」という判断を示した

▼事件になる親のほとんどが実行できないことを語り、行政側にも健全な家庭を築く施策はない。互いが幻想をもとに行動しているに等しい

▼県の組織はかつて「青少年婦人課」の名称で子どもと女性問題を一緒に扱っていた。いまは「こども・福祉部」と「環境生活部ダイバーシティ社会推進課」、「雇用経済部雇用対策課」に分かれたが、「女性相談所」は「こども・福祉部」。両者の切り離しは難しい

▼虐待で特に警戒すべきは父親の暴力というのが県の調査報告。「両親」もひとくくりにできない。組織の統合と分離を国はこれからも繰り返していくことになる。