2021年12月12日(日)

▼年末調整の季節となり、ささやかな還付金にほのかな期待を膨らませる庶民も少なくない中、三重県の大紀町は8年間、被保険者死亡に伴う介護保険料の還付金などを返金していなかった。職員の誤った認識が原因という。何をどう誤ったか、不明なのは県の繰越金失念を思わせる

▼「還付金未払い」という報道が、還付金詐欺を連想させもする。対象者は1185人。町人口の約16%。町民税の均等割の軽減措置の誤適用もあって、こちらは15年間。時効の十年間を除く返還対象者は約300人。服部吉人町長は「多くの方にご迷惑をおかけし」と陳謝した

▼「ご迷惑」の中身は「還付すべき保険料が還付されなかった」「税の軽減措置が適用されていなかった」ことだが、還付金詐欺の被害にあった町民はいなかったのかどうか

▼警察庁が警戒を呼びかける詐欺の具体的例は「年金支給が一部未払いとなっておりましたので、受け取る手続きをしてください」に始まる一本の電話。「お亡くなりになったお父さま(お母さま)の介護保険料の還付金が未払いでした」となれば信頼度は増し、その責任は町にもあるのではないか

▼還付金は払いすぎた分が戻ってくる制度。介護保険の場合は転出、死亡、所得更正などで過払いが生じる。なじみは薄い。役所のミスで還付金の未払いが長年続いていたという事実が記憶に残るだけで、心理の隙を操る詐欺集団に絶好の材料を与えたかもしれない

▼窓口行政である町のミスは町民に直結する。中二階と呼ばれる県は、県自身の「損失はなかった」とうそぶいていられるのは幸せである。