<まる見えリポート>アスリートの情報発信 コロナきっかけ ファンとの交流、様変わり

【オンラインサロンの会費で購入したバスケットゴールを地域に寄贈したヴィアティン三重の溝口選手(左奥)=8日、伊勢市の有緝こども園で(提供写真)】

インターネットの会員制交流サイト(SNS)の普及でアスリートとファンの関わりが様変わりしている。県内でもSNSを通した情報発信に加えて、専用プラットフォームを使ったクローズド(非公開)な交流に取り組む例もある。新型コロナウイルスの影響が長期化し、直接の交流に制限がかかる中、アスリートたちは新しい形でのファンとのつながり方を模索する。

四日市市や津市を拠点に、バスケットボールのプロリーグ、Bリーグ入りを目指して活動している社会人チームのヴィアティン三重では、主力選手の1人、溝口秀人選手が会費制でウェブ上で開かれる「オンラインサロン」を運営している。

福岡県出身の溝口選手は、愛知学泉大を卒業後、当時bjリーグの滋賀レイクスターズを皮切りにB1のレバンガ北海道など各地のBリーグチームでプロ選手としてプレーした。その経験を買われて2020年に発足したヴィアティン三重に所属している。

きっかけはコロナ禍だった。チーム発足直後、県内でも新型コロナウイルスのまん延が始まり全体活動ができなくなくなった。「自分に何ができるのか」考えた結果、Bリーガー時代に研修を通じて学んだメディア対応の大切さを思い出し、生まれたばかりのチームを知ってもらうため、個人での情報発信を思いついたという。

昨年11月に開設したサロンでは自分やチームの活動報告やバスケットボール以外の趣味について日記形式でつづるほか、ウエブ会議システムを使った会員との直接交流など実施。オリジナルグッズの作成などの企画を通して会員と交流を深めるほか、会費の一部を地域の幼稚園や保育園に寄贈する移動型バスケットゴールの代金に充てる地域貢献活動も始めている。

会員はまだ十数人でサロンの運営で得られる収入も限られているが、現時点では収益が目的ではないという。「自分自身まったく知らない土地だったがサロンの活動を通じて色んな人とつながることができた。バスケ以外知らなかった自分が人と人のつながりを学ばせてもらっている」と話す。

チームを挙げてインターネットを活用したファンサービスに取り組むのが同じヴィアティン三重ファミリークラブ傘下のバレーボールだ。SNSを使った情報発信にかねてから力を入れており、動画サイト「ユーチューブ」の公式チャンネルは現在2万人を超す登録者がいる。

今年から新たに、定額課金でインターネット上の特典も受けられる「サブスク」型のファンクラブを提案。インフルエンサーマーケティングを手がけるザクー社(東京)が運営する会員制のコミュニティアプリ「ファニコン」を活用して、1月500円からの料金設定で、限定コンテンツやメッセージを配信している。

コロナ禍で無観客試合が続き、選手との接点が減ることによるファン離れを防ぐ狙いもある。選手の中でもSNSの活用状況にばらつきがあり、チームディレクターの田中一彰さんは「チームとしてのプラットホームを持つことが集客につながる」。練習風景や紅白戦、試合前のロッカールームなどの生配信のほか、スポンサー企業で勤務中の選手の写真を限定で公開するなど、ファンの心をつかむコンテンツ作りに工夫を凝らしている。