2021年10月14日(木)

▼ブレーキとアクセルを同時に踏む―はむろん比喩である。それでは運転はできない。一向に沈静化しないコロナ禍の中で、コロナ対策と景気振興策を両立させようとして感染爆発を引き起こしていく政府が、そんな比喩で非難された

▼一見勝之知事が5日、飲食店支援策「GoToイート」の再開について「アクセルとブレーキを同時に踏むことは適切でない」と語ったのは、政府の施策への批判を承知の発言だろう。前県政で、同支援策や県の独自振興策を打ち出し、延期や中断に追い込まれたことを念頭にしてのことかもしれない

▼緊急事態宣言後に14日間の「リバウンド阻止重点期間」を設け「GoToイートは当然アクセル。今はブレーキを踏んでいるところ」とも語ったが、同期間が明けると同時に再開を表明し「ブレーキを少し緩める」。少し、アクセルとブレーキを同時に踏むということだろう

▼コロナ禍で引用されるカミュの小説『ペスト』は、ペストがある日、まるで潮が引くように終息したことで最終章となる。「ペスト菌は決して死ぬことも消滅することもない」とカミュはつづる。辛抱強く待ち続け、ある日再び幸福な町を襲う、と

▼第5波もまた、突然に終息に向かった。理由について、一見知事も、ワクチン接種、人流抑制効果をあげる。が、それだけでは説明しきれないという専門家は多い

▼ブレーキとアクセルを同時に踏む運転の唯一の例は、坂道発進だろう。オートマチック車になってずいぶん簡単になったが、それに応じてブレーキとアクセルを左右別々の足で踏み分ける人は少ない。