2021年9月30日(木)

▼県が計画の中止や抜本的な見直しを求めるのは異例だという。松阪市飯高地域と大台町境に建設計画された国内最大規模の風力発電所についての事業者の計画段階環境配慮書に対する知事意見だ

▼全区域が自然公園内で、希少生物の生息が確認されているとし「事業計画を中止するか、事業実施想定区域の抜本的な見直しが必要」。再生エネルギー推進の旗を振り、国定公園内の青山高原に日本最大の風力発電施設計画を承認した県とは思われない。各地の風力発電計画への地元反対を見て、煮え切らぬ対応に修正してはいた

▼地元松阪市の竹上真人市長が市長意見で「地域住民との合意形成を求めた」とし、市の立場として「われわれは中立。今の段階で推進、反対という立場にない」と議会で答えたのに比べ、大きく反対色を鮮明にしている。この際だから、三重とこわか国体・大会の断念と同様、一気に前県政の〝負の遺産〟を精算しようとしているのかもしれない

▼旧紀伊長島町(現紀北町)が反対していた産業廃棄物中間処理施設の設置を、県が許可したのも北川正恭氏が知事に就任した直後の平成7年5月10日。同町はそれから12年の裁判闘争を経て敗北することになる。知事交代のどさくさに難題を処理しようとするのは県の常とう手段だ

▼業者はかつて同市飯南町で風車8基を企画して、市長から「住民合意が得られているといえない状況」の意見が出された。その後合意へ努めた形跡もなく、今度は60基だ。県としては、態度を一変させるのにもってこいの相手でもあったか

▼8年かけて本来に戻った。