2021年9月23日(木)

▼知事が交代する時、三重県はしばしば〝お荷物的〟事業の決断や精算を試みる。新知事に重い責任を負わせたくないというそんたくか、新たな指示を受けては面倒という処世術か

▼平成29年度を「スポーツ元年」とし、以後厳しい予算編成の中で「いいのはスポーツばかり」という庁内の〝うらみ節〟が聞こえていた。しっぺ返しは今だ、と機を見るに敏の知恵者がいたか

▼三重とこわか国体・大会開催の賛否はともあれ、少なくとも5年間、効果を説いて〝オール三重県〟の大合唱で県民の心を一つにしようとしてきた。知事選で何の争点にもならないまま、唐突に延期はしない方針を固める

▼両大会中止は、新型コロナウイルスの感染拡大阻止のため。すなわち県民のためだった。延期しないのは、新たな財政負担に耐えられない、あるいはその確保に「聖域なき予算の見直し」(関係者)が必要。すなわち県庁の事情。お役所的、あまりにお役所的判断に驚く

▼青木謙順県議会議長は6日の定例記者会見で両大会の延期について「競技団体や市町の意見に加え、地域から選ばれた議員の意見も伝える必要もある」。コロナ対策では「運動会などの学校行事を全て中止する短絡的な考えにならないよう」。一部の市町を除くこれら県民の声に無言で背を向けた格好だ

▼昭和50年の三重国体も財政難で返上の声もあった。赤じゅうたんを紙製にするなど「けちけち国体に徹し、三重方式として華美に流れていた国体運営に歯止めを掛けた」というのが当時の田川亮三知事の自慢。行政の意気や質は確実に落ちているようだ。