2021年9月24日(金)

▼みずほ銀行の相次ぐシステムトラブルで、金融庁は業務改善命令を出し自ら管理することにした。大方の読者とともに、トラブルの原因が何か、よく分からない。専門書は手が出ず、新聞や金融界出身の評論家の分析は隔靴掻痒の感だったが、同行自体が把握していない可能性があるというので得心した

▼得心は、同行ならさもありなんという気も含む。同行の前身の中核行である第一勧銀は第一銀行と日本勧業銀行の合併で旧都銀トップの預金量となったが、たすき掛けといわれた人事同様、システムもメーカーの違う両行の機種を交換機のような役割のインターフェースで連携を保った

▼このため機種の世代交代に伴う抜本的更新がしにくく、システム的には都銀13行の中で後塵を拝し、別格扱いにされた。これに対し、同じ前身の中核行、富士銀行は最先端の技術を誇り、業界トップの意識も高く、他行のシステムを超然と見下ろすきらいがあった。日本興業銀行は政策銀行としてシステムも独自で、こちらも別格的存在だった

▼それぞれ異なるプライド意識を持つ3行のシステム部門が合併して機能するかの疑問はあったが、日本IBM、富士通、日立製作所の3メーカー系も温存されているという。1つの銀行で3メーカーが競争しているということである

▼戦国時代の上杉、武田両軍の初めての激突は武田軍が完勝。上杉謙信は「自分がいたら」と悔しがったが、部下から戦況を聞き取ったあと「最低限の名誉は保たれた」と不在の幸運に感謝したという。海音寺潮五郎『天と地と』の挿話。金融庁はどうか―。