2021年9月17日(金)

▼東京五輪・パラリンピックの開催に賛否はあったが、観戦した人を感動に導いたのは間違いない。特にパラリンピックは障害者への理解を深めたとされるが、熱気が冷めた今はどうか

▼大会中でさえ疑問に思うのは、日本精神科病院協会(日精協)が会員約1200病院を対象にした調査だ。入院中に新型コロナウイルスに感染し死亡者が235人。転院できないままの死だったという。病床ひっ迫のせいか、精神科病院ゆえかの特定は困難としながらも、日精協は「日ごろから精神症状を理由に受け入れてもらえないことはある」とし「極めて由々しき問題」としている

▼調査のきっかけは、死者約70人という国内最大規模のクラスター(感染者集団)が、沖縄県の老年精神科病院「うるま記念病院」で発生したこと。感染症に対応できる設備がないことをはじめワクチン接種者が1割程度、院内の行動が自由、安全のため窓は閉鎖―などの精神科病院特有の構造が、感染を拡大させたともいわれる

▼県の最大規模のクラスターも精神科病院だった。共通した問題だろう。県立の精神科病院で受け入れたが、むろん全員ではなく、隔離効果だけで感染対応設備が整っているわけではない。転院や移動制限は病状悪化を招きやすく、ワクチン接種の同意も得にくい

▼法は障害者に対する「合理的配慮」を義務づけているが、スポーツ施設にその兆しはない。病院もコロナで仕組みを改造したところは多く、精神病院では別に大量虐待が発覚している。せめてパラリンピックの感動を持続して、日本の精神医療を注視したい。