▼記事を書くときはサイドも忘れるな、あるいはサイドをどうするか考えて書け、とよく言われた。いわゆる5W1Hを基本に全体を簡潔に捉える本記とは別の視点でニュースの本質に迫る。実際にサイドが載るニュースは少なかったが、取材の厚みにもつながる。そんな昔の記憶がよみがえった
▼知事選企画をはじめ三重とこわか国体・大会についての実行委員会総会、新型コロナウイルスの新規感染者数、県職員らのワクチン接種開始などの8日付紙面は、横軸を貫く県のコロナ禍の実態を浮かび上がらせる
▼県職員対象のワクチンの職域接種が1カ月遅れとなった。原因は供給不足で、県の供給体制の実情を物語る。この間県職員4人が感染したが、後手が招いた結果とも言える。病床の増床要請も目標にほど遠く、確保できたとしても増え続ける入院調整中や自宅療養者数との差は開く一方
▼自宅療養中に死亡した患者は3人で、救急搬送直後の死が1人。入院受け入れ拒否で救急搬送中に死産した女性が1人。コロナ病床の拡大で、コロナ以外の病気で手遅れになった人がいたことも
▼鈴木英敬知事が巨大なスポンジのように業務を増やして保健所では、検査は濃厚接触者優先に切り替えられ「正直に言うと検査でさえも選別せざるを得ない」(ある担当者)。多少の増員や市町への保健師派遣依頼などでどうかなる焼け石ではなさそう。知事の説明とは違う世界が見えてくる
▼県の職域接種では医師が順に参加者を回る仕組み。接種業務は県の医師職、事務職が担当という。コロナ禍の医療態勢を考えさせられる。