<まる見えリポート>コロナ禍の三重国体 賛否ある中、中止は回避か

【無観客開催となる公算の大きい津市の国体競技会場=津市北河路町で】

開会まであと41日と迫る三重とこわか国体―。県は14日時点の感染状況などを踏まえて週明けにも開催可否を判断する見通しだが、無観客開催の公算が大きい。一方、新型コロナウイルス感染症の急拡大で緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象が全国で広がり、県内でも飲食店の時短営業が始まった。市民団体や首長から中止を求める声も出る中、安心安全な国体をどう開催するのか。

県内の感染者は連日100人を超えている。14日から飲食店への時短要請が始まり、同日には鈴木英敬知事が政府にまん延防止等重点措置の適用を要請するなど県は感染症対策で危機感を強める。

こうした中で、県は国体の開催可否の判断を迫られている。国体の中止を求める声は東京五輪が開催される前から出ていた。岡本栄伊賀市長は6月の市議会本会議で「いまやるべきことではないと思う」と述べ、中止か延期にすべきとの考えを示した。

今月には市民団体「県民本位のやさしい三重県政をつくる会」が「感染の拡大リスクを高めるイベントを開催することは県民の命と健康を危険にさらす」として、中止を求める申し入れ書を鈴木英敬知事に提出した。

一方で、開催を期待する声もある。国体に協賛した企業の中には「感染が収まらず、難しい時期だと思うが、ぜひ有観客で成功させて日本の模範になるようにしてほしい」と有観客での開催に言及する企業のトップもいた。

無観客で開催したとしても、選手や大会関係者から感染者が出る可能性は否定できない。全国で感染が広がる中、無観客開催にしたとしても選手・監督約2万5千人が県に集結する。県は選手へのPCR検査などで感染症対策を徹底する方針を示している。

無観客開催となった場合、開催県にとって楽しみの一つである試合の観戦機会が失われる。県国体・全国障害者スポーツ大会局の職員は「選手が活躍するところを見てほしい。観戦は子どもたちにスポーツに興味を持ってもらう機会にもなる」と語る。

県によると、国体チャンネルで競技の模様がインターネット中継されるものの、競技によっては予選などが国体チャンネルで配信されないという。

経済的な影響への懸念もある。百五総合研究所(津市)の試算によると、三重とこわか国体・とこわか大会(全国障害者スポーツ大会)がもたらす経済波及効果は無観客開催とした場合、約993億円で、県内外から観客を入れて開催した場合と比べて29億円減少する見込み。

この試算では、両大会の来場者を過去の大会をもとに46万1000人と想定している。このうち観覧者が23万3千人。同研究所の担当者は「経済波及効果の半数を占めるのは施設整備費。無観客となった場合は、来場者の消費支出に影響する」とみている。

今のところ国体の中止は回避される見通しだが、それも知事選の結果次第という面もある。会期前競技は知事選の真っただ中で始まり、新知事決定直後に国体が開幕する。感染状況も日々刻々と変わっていく。国体間近での方針転換は現実的ではないが、「前任者が決めたこと」という言い分だけでは納得してもらえない。現職と後任それぞれの判断に注目が集まる。

鈴木知事は14日のぶら下がり会見で、国体の開催可否について「現在の状況を踏まえて関係の競技団体と意見交換をしながら判断したい。観客の部分は精査が必要」と話した。まずは現職の説明を聞きたい。