<まる見えリポート>女子サッカー審判員 岩本さん、県で2人目の女子1級取得

【令和2年10月、松阪市内で開催した第42回皇后杯全日本女子サッカー選手権東海大会決勝で審判を務める岩本毬花さん(三重県サッカー協会提供)】

今月16日のサッカーJ3リーグYSCC横浜―テゲバジャーロ宮崎戦で東京都出身の山下良美審判員がJリーグ史上初めて女性として主審を務めて注目された。三重県内でも女子のサッカー審判員の育成が継続して行われ、今年2月には鈴鹿市在住の会社員、岩本毬花さん(24)が女子国内最高ランクの女子1級を取得したことが日本サッカー協会から発表された。県サッカー協会登録者では2人目の女子1級審判員の岩本さんは中学時代から審判の勉強を始め、協会のサポートも得て順番に昇級してきた。周囲の支えに感謝しさらなるステップアップを誓う。

岩本さんは少年サッカーチームの指導者の父の活動を助けたいと、中学1年で4級、3年で3級の審判員の資格を取った。高校は男子サッカー強豪の津工業に進み、男子部員と同じ練習で体力を鍛えながら、練習試合などで審判も務め、高3で地域のサッカー協会の主催試合で主審を務められる2級審判員となった。

女子の国内大会で主審や副審ができる女子1級への挑戦を始めたのは高校卒業後。同じ試合で審判を務めたり、研修会で知り合った県内外の女子審判員たちの姿に刺激を受けたことが理由という。女子1級の試験は2度目のチャレンジで合格しており、1度試験に失敗してからは入念な体力トレーニングに加え、毎週末笛を吹いて技能を磨いた。県サッカー協会審判委員会女子部代表の間島美奈子さんも毎回帯同し、現場で助言をくれたり、お手本を見せてくれたという。

「色々な人のおかげで取れた」と感謝を忘れず、4月に女子アマ国内最高峰リーグのなでしこリーグ2部開幕戦で主審デビュー。6月には1部の試合で主審デビューを控えている。「競技をする人、見る人が試合に集中できる審判になりたい」と抱負を語り、今年秋開幕予定の女子プロリーグのWEリーグ、さらには国際試合での審判活動も夢に描く24歳に、間島さんも「経験を積んで上で活躍して欲しい」と期待をかける。

岩本さんは高校時代、高校生がサッカーの公式戦で主審や副審を務める「ユース審判員」として活動することでも経験を積んだ。高3の時にはほかの女子高校生審判と県高校女子サッカー新人大会を一緒に運営したことも。中でも、県内男女ユース審判員の代表として派遣された全日本少年サッカー大会を裁いた経験が「自分にスイッチが入った瞬間だった」と話す。

県サッカー協会では優秀な審判の発掘・確保を目的に早くから高校生審判の育成に着手している。平成23年から審判委員会にユース審判員育成部を立ち上げ、近年は毎年約40人の高校生がユース審判員として活動。女子も2、3人が登録しているという。

上野工業(現伊賀白鳳)高校時代に3級審判員になった伊賀市在住の中澤涼さん(31)は、1級審判員の資格取得後、Jリーグ担当審判員になり、これまでにJ2の70試合で副審を担当した。審判委員会強化部担当でユース審判の育成にも関わった四日市工業高校教諭の島田浩幸さんは「(ユース審判員出身の中澤さんや岩本さんが)頑張ることで高校生の良いモデルになる。楽しんで審判する姿を色んな大会で見せて欲しい」と話している。