<まる見えリポート>三重県議会の定数削減可決 紛糾の末「スピード採決」

【変更後の選挙区と定数】

議員定数の3減や選挙区の改変を盛り込んだ条例案を賛成多数で可決した三重県議会。採決の直前に正副議長への不信任動議が出されるなど、波乱の展開を経ての成立だった。反対派の批判は条例案の内容にとどまらず、正副議長の任期を意識した「スピード採決」をはじめとする運営手法にも及んだ。条例案の基になった正副議長案が、大会派による「水面下の交渉」で策定されたのではと疑う声も。一方、賛成派が反対派を「常識外れ」とSNSで批判するなど、条例成立後も県議会に禍根を残している。

条例案の可決により、長きにわたる定数と選挙区の議論に一定の決着が付いた格好だ。県議会は平成26年に定数を6減の45とする条例案を可決するも、一度も選挙をせずに51に戻した経緯がある。

31年の改選後は「議員自身では決められない」との考えから、有識者による調査会を設置。今回の条例案は、調査会の報告書を踏まえて正副議長が示した「たたき台」が、そのまま採用された形だ。

ただ、採決があった11日の本会議では「あまりにも拙速。正副議長の私利私欲だ」などと批判が相次ぎ紛糾。38対11の賛成多数で可決したが、自民党県議団と自民党の各会派からも1人ずつ反対が出た。

改変の内容に対する不満も相次いだ。3・28倍となっている「一票の格差」は今回の改変によって2・41倍へと縮小するが、「定数45」を実施していれば、1票の格差はより縮小するはずだったからだ。

選挙区の改変も「定数45」の際とは全く異なる。今回の条例が定めた東紀州の合区や鳥羽、伊勢両市の合区、伊賀市の1減は「45」では盛り込まれておらず、反対派は「十分な説明がない」と主張する。

正副議長案の公表から採決まで、わずか2カ月間という「審議の短さ」にも批判が続出した。正副議長案に対するパブリックコメント(意見公募)の実施期間も2週間と、通常の半分程度だった。

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長年にわたって議論が平行線をたどり、結論を出せなかった県議会が、なぜ早急な採決に転じたのか。正副議長は「われわれの任期中にめどを付けたかった」と説明するが、それだけが理由なのだろうか。

反対派は、条例案の策定過程にも疑念を抱く。条例案の基となった正副議長案は、新政みえや自民党県議団などの大会派による「水面下の協議」によって策定されたのではないかという疑いだ。

根拠とするのは、ある議員のSNS。伊賀市の一減を重視する自民党県議団と東紀州の合区にこだわる新政みえが「妥協した」との内容だ。この〝妥協〟について正副議長は「把握していない」と説明する。

条例案の採決後も定数と選挙区を巡る話題は尽きない。新政みえの稲垣昭義代表は「少数意見の尊重と駄々っ子は違う」と題したコメントをSNSに掲載し、条例案に反対した議員らに波紋を呼んでいる。

コメントは「本会議では価値観が違うあまりにも失礼な常識外れの人たちに対し、大義のためじっと辛抱してくれた多くの議員のおかげで長年の課題に一つの結論を出すことができた」としている。

反対派は「あまりにひどいコメントだ」と憤りをあらわにするが、起死回生に向けた「次の一手」はあるのかと問えば「今はじっと我慢するしかない」。次期県議選までの対応が注目される。