2021年5月15日(土)

▼日沖正信県議会議長が厳重注意し、再発防止策の決議案策定を決めた。同性カップルの住所を無断でブログに掲載した小林貴虎県議の問題は、議会としてはひと山越えたといえようか

▼小林県議と同性カップル宅を訪ねて謝罪した自民党県議団の津田健児団長は温かい言葉を受けたとして「完敗という正直な思い」。日沖議長は先の会見で「(謝罪後の同性カップルの)ブログを見ると、お互いに理解し合えたようで大変に良かった」。代表者会議では「大きな前進」の声も。メンバーの上機嫌な顔が目に浮かぶ

▼とはいえ、雨降って地固まるかどうかはこれからにかかっている。現時点で何かが改まったわけではない。4月21日の代表者会議で小林県議は謝罪したが「どの辺りが人権侵害なのかよく分からない」とした認識がどうなったかは必ずしも明確ではない。そこはあいまいにして、取りあえずフタをしたと受け取られかねないのである

▼謝罪に対し同性カップルから温かく迎えられたことも、手放しで喜べることかどうか。受け入れを拒否した途端、全国から非難が殺到したのが元ハンセン病患者宿泊事件である。差別される側が公開の場で対等に思いを主張することは常に危険が伴う

▼差別・人権問題の克服は研修を重ねるなど、地道に内省の機会を設ける以外に王道はない。議員の人権意識を高める決議が「しっかりした内容」でも一過性に終われば懸念は残る

▼パートナーシップ制度が条例から外れたのは議会の異論のためといわれる。あらゆる差別解消を考える継続的な取り組みも検討する時ではないか。