2021年4月15日(木)

▼「応援した方はかわいそう」と鳥羽市の知人が市長選後、新人支持者らに向けて言った。現職陣営の中枢に人脈を持つ。それだけに「弁の立つ」新人のSNSを駆使した選挙戦術は脅威だったらしい

▼約千票差という勝利の意味づけはともかく、「ほっとした」と語ったのが現職側の空気を表しているが、「かわいそう」というのは、しかし、敗者支持者らが今後の市政の中で日陰の道を歩むということではない。敗戦後、新人が「市民は衰退を選んだ」などと言ったと伝え聞いて、同じ市民として心境はいかがかとおもんばかったのだ

▼現職の勝因は「海のシリコンバレー構想」「コンパクトプラスネットワーク実現」の公約への期待というより「地味だが堅実」という性格が大きかったといわれる。1期目の実績が評価されたという見方は、本紙が「やや疑問」と一蹴する

▼開票作業途中まで、事務所への市議らの集まりはいまいちだった。「当確が出て続々現れた」と先の知人が笑った。洞ヶ峠をきめ込んでいたとみえる。スローガンに「衰退から発展へ」を掲げ、民間経験や市長給与削減、副市長廃止などの改革を公約に打ち出した新人の勢いはなかなかだった

▼本紙は新人の懸念材料として「職歴の変遷を不安視」をあげた。民間や公募での公職などの経験の積み重ねが逆に移り気に映ったか。市長選に初挑戦した平成9年選で後味の悪い敗戦の弁を残し市を去った記憶も残る。今回またか、の思いなのである

▼4年後に「市民は繁栄を選んだ」と思わせてほしいというのが現職陣営共通の意地であり、願いだろう。