<まる見えリポート>内水面漁協の協力金強要 県「知らないふり」一転謝罪

【三重県が建設業者に実施した内水面漁協に関するアンケート結果】

内水面漁協が三重県の発注工事に絡んで建設業者に協力金の支払いを強要したとされる問題。これまで協力金の存在すら「知らない」と貫いてきた県が今月、一転して「建設業者に寄り添えていなかった」と謝罪した。不当要求の根絶に向けた協議会を設けるなどの再発防止策まで公表。建設業者へのアンケートで「県に知らないふりをされた」と回答されて「見ぬふり」もできなくなったようだ。ただ、建設業界からは「新たな対策で解決するほど簡単な問題ではない」とし、問題の〝根深さ〟を訴える声も上がる。

「建設業者の相談に適切な対応ができず、県民の信頼を損ねる事案が生じたことを重く受け止め、深く反省している」。鈴木英敬知事は2日の県議会で、稲森稔尚県議の一般質問に答弁する形で謝罪した。

協力金の存在が浮上したのは昨年6月。県発注の河川工事を巡り、桑員河川漁協の元組合長が恐喝容疑で逮捕された事件がきっかけだったが、県は協力金の存在を「把握していない」との姿勢を貫いてきた。

そんな県を謝罪させたのは、建設業者のアンケート結果。業界団体への聴取で済ませようとした県が、外部から「組合に加入していない業者にも聞くように」との指摘を受けて実施を余儀なくされたという。

アンケートに回答した19社のうち、18社が漁協に協力金を支払い、13社が「漁協に要求された」と回答。県に相談した8社は「知らないふり」をされたほか「業者の方で対応を」と言われたという。

自由記述では建設会社の不満があらわに。「協力金を支払わないと工事に着手できない」「漁協から下請け業者を指定された」と内情を訴える声のほかに「官公庁は漁協のいいなり」との批判も上がった。

県は謝罪に併せて、再発防止策も打ち出した。県発注工事の仕様書には「漁協への説明は県が担う」と明記するほか、県警や弁護士会などでつくる協議会を立ち上げて建設業者の相談に応じるという。

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最近まで協力金の存在すら「把握していない」としていた県にとってはスピード感のある対応だが、一部の建設会社からは、早々にも「今回の対策では根本的な解決にはならない」と懸念の声が上がる。

自社の特定につながりかねない情報の一切を明かさないことを条件に本紙の取材に応じた建設会社の男性幹部は「お願い」と題する一枚の文書をかばんから取り出した。これが協力金の請求書だという。

請求書には、県が根絶に乗り出す「不当要求」につながるような文言は一切なかった。代わりに並ぶのは「豊かな河川の保護に協力を」「子どもたちに自然を引き継ぐために」といった崇高な文言だ。

一方、県は「協力金の廃止」を掲げるが、あくまで廃止の対象は「工事の承諾を前提としたもの」だという。男性が明かした協力金は廃止の対象なのか尋ねたが、県の担当者はうつむいて口を閉ざした。

さらに、問題は県と漁協にとどまらない。関係者によると、協力金を支払った後も漁協幹部を名乗る人物から追加で支払いを要求されるケースも。「国発注工事でも協力金は存在する」との声もある。

謝罪と対策で問題を乗り越えたい県だが、建設会社に漁協の承諾を得るよう促した背景も含め、協力金を巡る全容は明らかになっていない。これらに「見ぬふり」を貫くままでは、解決に至りそうもない。